BL

□お約束
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「ひぅ、そんなトコ、触るな…っ!」

太ももから、下着の際どいあたりを雄介の指が行き来する。
ぞわぞわと背筋が泡立つ。

「さて、小田桐さん。ルール覚えてます?勝ったほうが負けたほうに命令できる、でしたよね?もちろん、命令がこれを着るコトだけー、なんて…思ってませんよね?」

愉しそうに頬を緩めながら囁く。
僕は背筋が寒くなるのを感じた。

「ま、まだ何かあるのか…?」

「当たり前ですよー。むしろ、これは序の口っていうか、オープニング?」

メインはまだまだ、と目を細めて笑いながら言う。

「じゃー、まずは小田桐さんからのキスが欲しいです」

太ももにある手はそのままに、僕の両腕の自由を奪っていた手で僕を起こす。
自由になった手で、雄介の手を払いのけようとしていると、雄介の首に回された。

「はい、手はここ!んでもって、唇にキスしてくださいね?」

首に手を回したコトにより近くなった顔。
にこにこと笑う雄介は目をあけたままだ。

「…せめて、目を瞑って…くれないか?」

「はいはーいッ!」

言われた通り、目を瞑る雄介。
まじまじと近くで見ると、やっぱり整った顔立ちをしている。
伏せられた長い睫毛の奥に潜む瞳が、実は結構好きだったりする。
回した手に触れる金髪も、さらさらと手触りがよくて好みだ。

「小田桐さんー?まだですかー?これ俺、なんの生殺しだって話ですよー」

「わ、悪い」

仕方ない、これはルールなんだ。
ゲームに負けた僕が悪い。
必死に自分に言い聞かせ、回された手に力を込めて意を決して唇を合わせる。
ちゅ、と軽い音がなって恥ずかしくなり、離れようとした瞬間雄介に腰ごと掴まれて引き寄せられた。

「んっ、んん!んんんっ」

僕の唇を割って雄介の舌が入ってくる。
そのまま歯列をなぞられたり、舌先を軽く吸い上げられたりして、僕の呼吸が危うくなったというトキにやっと解放された。

「ふあ…っ。雄介…お前なぁ…」

「すいません。俺のために頑張る小田桐さんがめちゃくちゃよかったもんで」

はぁはぁと荒い呼吸のまま雄介を睨むと悪びれなくそう言われた。

「つか、こうやって見るとマジ反則です。女の子を犯してるみてぇ……。それに小田桐さん、あんた睨んでるつもりかもしんねぇケド、上気した頬に涙目じゃ、誘ってるようにしか見えねぇから」

僕が言い返そうとした瞬間、腰ごと引き寄せられて雄介の膝の上にのせられる。
そのままワンピースの裾から指を侵入させつつつ…と背中をたどった。

「ん!雄介ッくすぐったいからやめろッ」

「えー、嫌ですよー。俺、小田桐さんが触れるたびにピクピク感じてるの見るの、好きなんすから。…つーかやっぱり軽いですねー」

「か、感じてるわけじゃ…、ッ」

ちりと鎖骨のあたりに軽い痛みを感じた。

「キスマーク、ついた」

雄介の意地悪な囁き通り、僕の鎖骨あたりには赤い痕がついている。

「お前ッ…!これじゃあ、当分首もとあけれないじゃないか」

スーツの上のボタンまで締めなければ見えるだろう位置についている。
あれは、息苦しいから嫌いなのに。

「小田桐さんは俺のだ、って証ですよ。小田桐さん、そこらしらで男を誘惑してくんですから。蹴散らすのも大変です」

「はぁ!?なわけないだろう」

僕があるわけがない、と断定すると雄介は呆れたような表情をみせた。

「まぁ、いいですよ。気付かないなら気付かないほうが安全ですしね。…小田桐さんもつけてくださいよ俺に。…キスマーク」

ぐいと自分のシャツの首もとを広げ、鎖骨を露わにしながら言う。
僕が雄介につける?
そんな、恥ずかしいコト…ッ。

「やってくれますよね?命令ですし。俺に小田桐さんの証をください」

「…〜!これで、命令は最後だからな!」

真っ赤に染まった顔でそうくぎを差し、雄介がにっこりと頷いたのを見て、僕は雄介の首もとに唇を近付けた。

「ん…―」


――この後何日間かは、キスマークをみんなに見せ付ける雄介によって、繭墨たちに苦い顔をされるのだが、それはまた別のお話。

end
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