04/22の日記
09:58
「恋人ノ特権」
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会話文。
原土。
「まだ居やがったのか、早く出て行けっ!」
「……俺だよ、土方さん」
「え?――あ」
「声もかけねぇで入っちまって、すまねぇ」
「いつから、そこに……」
「副長のでっけえ雷が、最後に一発落っこった辺り、かな」
「……ちっ」
「悪い、つい…な。説教されてた奴等、こないだ入ったばっかの新隊士だろ?」
「そうだ」
「転がるように飛び出てった、ありゃ、まるで怯えた子犬だ。
……あいつら、泣いてたぜ?」
「あんくれぇでメソメソされちゃあ、新選組の隊士なんざ務まらねぇ」
「で、何やらかしたんだ?」
「最近ここらを彷徨いてる猫がいたろう。そいつに、屯所の食料を勝手に与えちまってたんだよ」
「へぇ。それで、罰は?」
「今日明日の飯の種を調達してきてもらう。もちろん、金かけねぇでな」
「てぇことは……」
「日が暮れるまで、魚釣りと山菜採りだ」
「あっははは」
「なにが可笑しい」
「いんや、すまねぇ。あんたらしいと思ってよ」
「無断で食料に手ぇ出すことは許されねぇ。それに、こんな忙しい時に、野良猫に構ってる暇なんざねぇ筈だ」
「まだ童なんだ、しょうがねえさ。
土方さんだって、あの猫けっこう可愛がってたろ?」
「悪さしやがるから、たまに追い飛ばしてただけだ」
「夜中に猫へ話し掛けてんのを見た…て、千鶴が言ってたが」
「あれは……っ。
……猫のことはいいんだよ、それより。早く報告を聞かせろ」
「報告……?」
「今日の巡察、お前の組だったろうが」
「ああ、そうだったな」
「ったく、何しにこの部屋に来たんだ」
「……」
「な、何だ」
「ただ、あんたに会いたかっただけだ、って言ったら?」
「……ふざけやがって。
もういい、特別変わったことがなきゃ、帰って ―――っ !? 」
「ふざけてなんかねぇぜ、土方さん」
「おい……何する……
は、はなせ、左之助っ」
「……随分、機嫌がわりい時に来ちまったな」
「た、隊務の、報告に来たんじゃ……ねえのかよ……」
「だから言ったろ?
……会いたかった」
「ここがどこだか、わかってんだろうな」
「ああ、わかってるぜ」
「だったら、この手をはなせ」
「少しの間だけでいい……静かにこうして抱き締めるくらい、いいだろ」
「だ……誰か、来たら……」
「大丈夫だ。すこぶる機嫌の悪い副長の部屋なんざ、今日は誰も入って来やしねぇよ」
「お前は……のこのこ入ってきやがったじゃねえか」
「恋人の、特権だ」
「自惚れんな」
「本当は、このまま掻っさらってでも、こっから飛び出して……ずっと抱いてたい。
そんくらい、俺はあんたに惚れ込んじまってる」
「とんだ馬鹿野郎……だ」
「ああ。……好きだ、土方さん――」
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