参(2015)
□キセキ
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「奇跡って、本当に起きるもんなんだな」
「さ……の……?」
「探したぜ、土方さん」
「左之助……か」
「ははは、幽霊じゃねえぞ?」
「だ、だってお前、江戸に」
「遠かったぜ。異国に着いたかと思っちまった」
「…んで……何でこんなとこまで来やがった!!」
「不思議だよなぁ。何でか俺は、そう簡単には死なねぇみてえだ」
「お前はっ」
「銃弾の中を掻い潜って、必死で走って、逃げて………気付いたらここに辿り着いてた。なぁ、これじゃあ"士道不覚悟"で切腹、だよな?土方さん」
「お前は、大馬鹿野郎だっ」
「すまねぇ、馬鹿やっちまった……あんたに逢うためにな」
「くっ……」
「もうここまで来ちまったんだ、引き返せねぇ。だから、土方さん」
「帰れっ!俺に近寄るんじゃねえ」
「やっとあんたを見つけ出したんだ、誰が帰るかよ。一緒に、ここから出よう」
「……断る」
「土方さんっ」
「知ってんだろう、俺は――」
「関係ねぇ。どんな姿になろうとも、いま目の前に居るのは、俺が惚れに惚れぬいた土方歳三だ」
「……っ」
「愛してる」
「なっ……に」
「愛してる、土方さん」
「ふ、ふざけるなっ!」
「本気じゃなきゃ、こんな真似しねぇ」
「……俺は……嫌いだ」
「――なら、何で抱きついてる?」
「うる…せぇ」
「再会して、安心してくれたか?」
「違う、呆れてんだ!戦場から逃げ出す奴なんざ……せ、切腹だ…っ」
「……大粒の涙流しながら言う台詞じゃねえな」
「う……くっ」
「土方さんの傍で見守って、ずっと支えていくから――だから俺と、生きてくれ」
「左之……」
「こっから何があっても2人で生き抜いてみせる。言ったろ?"そう簡単には死なねぇ"」
「はぁ……ほんっとに、馬鹿な奴だ」
「ああ、土方さん」
「連れていってくれ、お前と一緒に、左之――」