移ろい行く
□03.
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「…………バカか私は」
ルチアは自分用に与えられた部屋の中で一人、吐き捨てた。
その表情には苛立ちと―――少しの苦しみが滲む。
もうあれから何年経ったと思っている。
十年くらい前の話なんて、覚えてるはずない。
なのに―――なのに何を自分は期待していたんだろう。
もういいや。
早く支援要求を汲んでもらえれば、私はもうノルドに帰れるのだから。
「ホント、バカだ…………」
やるせない気持ちが、どんどんと溢れていった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
時刻は夕食時。
アルカナファミリアの幹部の面々が集まっていた。
そこに、客人のルチアの姿もあるはずなのだけれど…………
「…………あれ?」
ルチアの姿はなかった。
もしかしてどこかで迷子になっているのだろうか。
軽く屋敷を案内しただけだから、迷子になっている可能性もないとは言い切れない。
「ねぇー。ご飯まだなの? おれ、お腹空いたー」
「そうですねぇ……。まだルチアが来てませんし…………」
「どっかで迷子にでもなってんじゃねェの?」
「デビト。笑い事じゃありませんよ!!
もしジョーリィと会ってしまっていたらどうするのですか!!
ジョーリィの事ですから、何か変なものを食べさせられているかもしれませんよ!!」
「ルカちゃん、流石のジョーリィでも初対面相手にそれはないよ。…………多分」
三人の話を聞いていると、少し心配になってきた。
ジョーリィも、悪い人じゃないんだけど…………
フェリチータは音をたてて立ち上がった。
「私、ちょっと見てくる!!」
「あ、お嬢!! 俺も行く!!」
立ち上がったリベルタと共に、ルチアの部屋へと向かった。
■ □ ■ □ ■
―――――しまった。寝過ごした。
ルチアは部屋の壁に設えられた時計を唖然と見た。
夕食の時間から、既に10分ほど過ぎていた。
これは昼間、あの食べっぷりを披露していたパーチェに怒られそうだな。
寝惚けているためかしっかり機能しない頭を擦りながら、ベッドから立ち上がると部屋のドアを開いた。
…………あれ? 食堂ってどこだっけ…………
確か、お祝いみたいなのの後にフェリチータに案内してもらったような気がするが、あまりよく覚えていなかった。
というかこの屋敷が広すぎる。
とりあえず、どっかに進もう。
歩いていればその内着くでしょう。
こんなルチアは、自分が“方向音痴”であることに気付いていなかった。