移ろい行く

□02.
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私は私の蹴りを喰らって悶えている二人からプイッと視線を外した。



ルチアに向き直り、少し頭を下げる。




「ごめんねルチア。喧嘩してるとこ見せちゃって。」


「ううん、大丈夫。別に気にしていないし」




ルチアはそう言うと、頬を掻いた。



アルカナファミリアには女性が少ないから、そんな仕草一つ一つに親近感を感じてしまう。



普通の女の子ってこんな感じなんだろうか?



ふとそんなことを思ってしまった。




「何々〜?自己紹介とか、そんな流れになってるの?」



そうこうしていると、向こうにいたパーチェ達が来ていた。




「ったく、ガキ共はいつになってもケンカばっかだなァ?」


「「うるさい!!」」




デビトはリベルタとノヴァをからかって遊んでいた。


二人がケンカした後、デビトがいたらほとんど100パーセントの確率でこうなっている。




「自己紹介というか……まあそんな感じかな?」




私がそう告げると、パーチェはキラキラと目を輝かせてルチアに向き直った。



このパーチェの感性はすごく子供っぽいと思う。


ただ楽しそうなことが好きなだけっていう、すごく子供っぽい感性が、私はたまに少し羨ましくなってしまう。




「えっと……ルチアだよね?
 おれはパーチェ。食べることならおれに任せて。
ちなみに一番好きな食べ物はラ・ザーニア!」



「ラ・ザーニア……?」




ルチアがはてなと首をかしげる。



そんなルチアを見て、パーチェの隣にいたルカがフォローを入れた。




「ラザニアですよ。パーチェはラ・ザーニアなんて呼んでますけどね。」


「ラザ…ニア…?」




それでもやはり、ルチアは首をかしげた。


もしかして、食べたことないのかな?



どうやらパーチェも同じ結論に達したようで、すぐに驚いたような顔をする。




「ええぇ!?もしかしてルチア、食べたことない!?
 ルカちゃん、出番だよ!!」


「……申し訳ありませんが、どっかの誰かさんのせいで食材を切らしているので無理です。
 どっかの誰かさんのせいでね。」




ルカがじっとりと視線を送るけれど、パーチェはそれをもろともしなかった。


パーチェも、リベルタと一緒でバカだからなぁ……。




「じゃあルチア!そのうち一緒に食べに行こうよ!
 おれ、おいしいラ・ザーニアの店知ってるしさ?」


「え……いいんですか?お仕事の邪魔とかになりません?」


「大丈夫だって!それに、そんなに堅苦しくなくっていいからさ!
 じゃあ約束だからね!」




ルチアがどこか無理やり気味に約束を取り付けられていた。



……可哀想に。



多分パーチェの大喰らいぶりに飽き飽きさせられそうだ。



私も行ってあげようかな、とか思うけどでもやっぱりあれは見ているだけで食欲なくすから……。



ごめんねルチア。




私は心の中で小さくルチアに謝った。




とりあえず、ルカの紹介をしておこう。




「こっちはルカ。えっと…私の従者で……。
 あ、料理を作るのがとっても上手なの!!」



「お嬢様に紹介していただいて、更に褒めていただけるなんて……!恐縮です!!
 とりあえず、よろしくお願いしますねルチア。」




人を紹介するなんて初めてだったから何を言えばいいのか分からなかったんだけど……。



とりあえずルカは満足だったみたい。




「こ、こちらこそお願いします。」




ルカの態度に驚いているのだろう。



いつもこんな感じだから、滞在している内に慣れてほしい。




「あー、ルチア。ルカちゃんのこれは気にしなくていいよ。
 もう病気みたいになっちゃってるからさ」




パーチェが小さくそう言うと、ルチアも小さく頷いた。



と、そこへリベルタ達を散々弄って楽しんできたのか、デビトがやってくる。




「お?かなり打ち解けてるみたいだなァ。」



「あ、さっきの………先ほどはありがとうございました」



「いいっていいって。それにそんな律儀なのはいらねェよ。
 俺はデビトだ。」




あれ?



この二人はもう会ってるのかな?




「あれ?デビト、ルチアと会ってたんですか?」



「ん?ああ。ここに帰ってくるちょっと前にな。」




どうやら『広場への行き方を教えてほしい』と言われたらしい。



デビトはルチアに目を向けた。




「つーか、ファミリーに用があったんならそう言えよ。
 連れてきてやったのにさ」



「…なんか知り合いに『昼間は広場に行けば大抵ファミリーの人と会える!』って言われて……」



「まぁ間違っちゃいねェけど。実際ノヴァと会えてるしなァ」



「確かにそうですね。広場は巡回路に入ってますから」




ルチアの知り合いの人はレガーロ出身の人なのだろうか。



旅行者とか移住者っていう人はやっぱりいるからありえない話じゃないだろう。


 
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