tusk

□発芽
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『相変わらず派手な仕事だな』

やはり彼の声だ
あの日の少年がここにいる
僕は黙りこんだ
その声がまるで、お前の全てを知っていると、脅しの様に聞こえたから

彼は背後の鏡をツゥと撫でペロリと舌をだした
温かい部屋の中、冷たい跡
その指の動きを追いながら僕は俯いた
彼はこちらに爪先を向け髪を弄りながら大笑いした

『いつも認めて欲しいって?』

「っ…?」

『…ハァ…、果てたり、捨てたり、偽りやら慰めやら
気持ちいいよと悶える顔をさ、そんな行為をさ
誰かに見てて欲しいだなんて、しかも金を払えだなんて
人ってのは本当に生臭い生き物だよね
僕らの再会は実際にもっともっと後でいいはずだったんだ
…、だってキミは矛盾だらけだろう?まだまだヒビすら無いのに旅立とうっていうの?
なのにあんな声で僕を呼べるなんて、全く信じらんないよ
あぁ、やっかいな子だ…っチ、』

彼は舌打ちをしながら僕を睨んだ

『だからさ…来たよ。僕が直々に』

なにか黒く滑らかなものが僕を包む気がした
それはナゼかヤケに心地よかった

『つまりだ、引き寄せてしまったんだ
こんなんじゃ先が思いやられる』

意味の分からない言葉ばかり並べ立てて、彼は少し微笑んだ

『ねえ、テミン…』

彼が理解できない

『どうする?』

なんの問いかけだか分からない

『早速こちら側へというならそれもいい
まぁ、対策は練れる、手は下せないが先輩として助言は出来る
とはいえね、これはB案だ』

彼はポケットから出した時計を見ながら続けた

『他人になどに終わらされたら質が落ちる
与えられたものを全うしてギリギリで自分から来なきゃ、な?これがA案だ。
大丈夫。キミは綺麗なうちにヒビ割れる
焦るとさ時期を間違えて、肝心なところで邪魔される
僕なんかお陰でこの有り様
何度名前が変わったか知れないよ
本当なら鐘を鳴らす人にもなれたのに』

そう言って天井を指差した

『さぁ、本題に入ろう
[氷のような溜め息のジオ]の話だ』






その名には覚えがあった




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