tusk

□年下の彼
3ページ/23ページ



キツキツのスケジュール
彼の企みや僕の迷いを全く許さない速さで流れていく
よく分からないのに、なんの不自然さも感じさせず
彼はスタジオの隅に大人しく座りマネージャーと談笑していた


「いやぁ、テミナ
なかなか面白い子だねぇ、顔もいいし頭もいい
SMに来る気はないかな」

少し離れた所から少年の声がする

「やだなぁ、マネヒョンったら
ね、テミン兄さん
そんな器じゃ無いよね、僕なんて」



あはははは


あはははは?


「おっ、まえ…」



マネージャーが現場を少し離れたのを確認しながら、僕は彼を問いただした


「どういう事?」
「あ?」


ゼロ、と名乗った少年は面倒くさそうに前髪を弄っていた

「とっさに合わせたけど、意味分かんないし」


浮かび上がる背の骨が、まるでこれから飛び立つ準備みたいにキュウと首を落とし小さくなった
直後
パッと上げた顔はまるでセルロイドのオルゴールみたいに悩ましげに振り返り、唇を噛んだ


「ねぇ。
しばらくでいいんだ、かくまって
こんなにガードがしっかりしてる隠れ場所なんてナイじゃない?」

少年はゆるゆると僕に近付き、少し下から鎖骨に上って手を触れた


「もう少しだけ
本当に、もう少しだけ
僕は生き延びなくちゃいけないの」


伏せた目の長い睫
少し悲しそうな俯きを追い掛ける影は、また、もう少しという所で殆どをサラサラ隠す


「意味わかんねー」


「なぁテミン

子供が生きてくには少々窮屈な世の中だな」


「…ガキが」


「…何も言わずに僕から離れないで
ほんの少しの間だけ
分かってるよ、見ず知らずの子供一匹
何を企んでるんだろうって、な」


そう言いながら彼は僕の胸元を掴んで引いた

まるで強引な接吻だ
掠めながら囁く




「少しイイ子にしててよ
じゃなきゃ…」


彼の視線は撮影の小物で談笑しているヒョン達に移る


「人を傷つけるのなんて簡単な事だ
な、テミン
すごく簡単な事だ」


彼はそう呟きながら、僕に寄りかかるように倒れた






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ