短編

□ロケット告白
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「提督!お茶淹れたぞ!」

「ああ、ありがとう」

 摩耶が淹れてくれるなんて珍しい。そう思いながら、私は既に敷かれていた座布団の上に座った。いつも摩耶が使っているやつだと思いながら、その湯呑みを手に取る。

「提督、それ惚れ薬入ってるから気を付けろよ」

 今にも傾けようとしていた湯呑みを、勢いよくちゃぶ台の上へと戻した。陶器と木材とがぶつかって、ガッと鈍い音を立てる。そんな「熱いから気を付けろよ」みたいなノリで何を……!

「お、お前……今っ……!」

「だって、言わずに飲ませたらずるいじゃねえかよ」

 おそらく耳まで赤くなっているであろう私と対照的に、摩耶はいつもの調子でさらりと言ってのけた。

「あたし、これだけは言えるんだ。どの艦よりもあたしが一番提督のこと好きだって」

 ちゃぶ台を挟んだ正面に胡坐をかいて座った摩耶は、じっと私を見つめて言う。

「けど、それを押しつける気はないぜ。これは、その……あたしが本気だってことを――」

 摩耶が言い終わる前に、私はちゃぶ台の上へと戻した湯呑みを口元まで運んで、一気に傾けた。それを見て、摩耶が勢いよく立ち上がる。

「ちょっ!!あたしの話聞いてたのかよ提督!!それは飲まそうってわけじゃなくて、本気だってことの示しで、」

「でも、入れたんだろ?」

「そ、そりゃあ、入れたけど……」

 少し俯きがちに「いいのかよ」と心配そうな顔をする摩耶を見て、

「お前が責任とってくれたら、何も言うことはないよ」

「て、提督……提督――っ!!」

 ぱああっと顔を輝かせて魚雷の如く抱きついてきた摩耶を受け止めながら、私は他の艦たちへの言い訳を考えた。恋人になったと言えばいいのか、嫁ができたと言えばいいのか……

 けれども摩耶の笑顔を見たら、後で考えればいいやと頭から吹き飛んでしまった。




(お前ら!提督は、今日からあたしの嫁だからな!)
((摩耶に先に言われた……!))

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