シリーズ

□おっさん妖精、あらわる!
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「…………」

 そろそろ休憩しようか。もう二時間くらい参考書に向かいっ放しだ。そう思ってシャープペンシルをノートの上に置いて立ち上がろうとした時、怒声が頭上から降ってきた。

「おいおいおいおい!」

「!?」

「なんでそこで諦めるんだ!そこで!!」

 ……謎のおっさんがいた。頭に「必殺」と書かれた謎のハチマキを巻く、緑頭のおっさんが机の前に立っていた。必殺……一体誰を必殺する気なのか。

「誰だお前」

 思わずそんな声を上げると、なんだ知らないのかと鼻で笑われた。

「だ、誰だって言うんだよ」

「俺はな、努力の妖精だ。姉の代替品を作るために青春とかいろんなものを費やした結果、熱く燃え上がって地球温暖化の原因に弟子入りした夢を見ている」

「ああ……努力の方向性を間違えるのが果てしなく得意、ってことだけはなんとなくわかったよ。そして後半が全くもって意味不明だ」

 しかし、一体どこから入ってきやがった。じっとその姿を見直す。やはりどう考えても妖精には見えない。おっさんだ。おっさんなら、敬語くらい使ってやらないと可哀想だろう。すでに頭の中身と生え際が可哀想だってのに。

「ハア……一応年上っぽいんで敬語を使いますけど……なんでそれを着てるんですか」

「半被か?そんなの決まってるだろう。はっぴ、ハッピー!最高の響きだろう!Be happy!!」

「……ああ、そうですか」

 もの凄くどうでもいい答えが返ってきた。もう口も利きたくないが、ずっしりと構えてテコでも動きそうにない。何か聞いてくれと言わんばかりに目を輝かせている。はっきり言って気持ち悪い。これで見た目がガキだったんならまだマシだったんだろうが。

 さっさと何か適当なことでも聞いて満足させて追い払おう。少しだけ気になっていたことを尋ねる。

「……なら、そのハチマキは?」

「必殺ハチマキだ」

「なんでそんなに得意気なんだ……」

「必殺だぞおまえ、なんせ必殺だからな。ひっさつひっさつひっさつ、ひっ、ひっころだ!」

「は?」

 なんだよ、ただの酔っ払いじゃないか。どう考えてもそうだ。酔っ払いしか考えられない。

「ぐぎゃっ……」

「……ふう。…………、……ん?」

酔っ払いのおっさんを蹴り倒して一息ついたところで、私は何かが聞こえることに気付いた。お経だろうか、低い声が響いてくる……。

「…………」

 耳を澄ませる。今度はお経の妖精かなにかが出てくるのだろうか。

「……ねん……しのの……」

「…………」

「……くねん……せき……のたたか……」

「…………」

「……せん……きゅうじゅう……べるさい……やく……」

 ガラッ。

「そんなところで何をしている言彦」

 押し入れを開けると、そこには小さく(?)体育座りをした言彦がいた。
 
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