短編
□彼は最強
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「師匠さん、私ここにいてもいいんでしょうか」
「いいに決まっているじゃないか」
「さっき店員らしき人に刀向けてましたよね、あれ脅しじゃ……」
「沢山呑むといい。私の奢りだ」
「話そらさないで下さいよ!?」
「ほらほら」
「私未成年!コーヒーあるでしょうここ!うわっ」
「呑め呑め呑め呑め呑め呑め」
「いやいやいやいやいやいや」
「…………。善良で善人な私の酒が呑めないというのかな?」
「どの口がそれを言いますか」
「俺の口だが」
「ぎゃあああ!素にならないで!」
「なってない、なってないから安心したまえ」
「それは無理な相談だ!とにかくそれはご自分でどうぞ!」
「こっちに寄せるな、呑め!」
「うぐっ!?」
「よし、呑んだね」
「んぐ……いきなり何するんですか!コップ無理矢理傾けるとか!呑んじゃったじゃないですか!」
「馬鹿が、私がしっかりと後頭部を固定して逃げづらくしてあげたというのに、それを指摘しないだなんて。気付かなかったのかな?」
「気付いてますよ!」
「……そろそろ夜も遅いか。私が家まで送ろう」
「ひ、一人で帰れます!」
「飲酒運転する気か?酔っているくせに」
「自転車なんですけど!しかも乗らないで押していくつもりなんですけどっ!ていうか酔ってない!」
「立ち上がっただけでよろけておいて、まだ言うのか」
「よろけてなんかないです!」
「私に送らせないと斬ってしまうぞ」
「ああっ、さては家に入ったところを押し入って自殺に見せかけて私を殺す気ですね!」
「何を言っているのかさっぱり分からないな。会話をしようか、会話を……」
「誤魔化そうたってそうはいきませんよ!私を殺した後にあのチャラ男、いや兄貴のタコ足かっさばいて売り飛ばすところまで、まるっとお見通しなんですからねっ」
「見通せてねえよ」
「あ、師匠サンが本性現した」
「酔わせて判断力を弱めた後に点数稼ぐつもりだったのが……これですからね」
「あー……首の後ろをトンってした」
「気絶させましたわね」
「っていうか、お兄サン発狂しない?気を失った妹が深夜に男に抱えられて帰宅とか」
「言い争いになるでしょう」
「ま、師匠サンが勝つだろうけどさ」
ピエロと魔女は傍観していた。