シリーズ

□ある一つの可能性
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「って言ってもどうせ書くだけだし構わないけど、流石にずっといるわけにもいかないからな」

「正月はどうする?」と食人くんが尋ねてきた。和服も似合っている。ラフな着方をしていて……って何を考えているんだ私は!食人くんが格好いいことは百も承知だっていうのに。

「こっちにこのままいるか、何人かと一緒に向こうに帰って宴会するか」

「私はどっちでもいい。……食人くん、前みたいに間違って酒を飲んだりするなよ、後も大変だったんだから」

「う……ごめん名前ちゃん。もの凄く酒臭いやつがいたから臭いじゃわからなくて……」

「帯と傀儡が済まないことをした……」

 そういえぱあいつら周りを巻き込んで飲み比べをしていたな。

「……って、なにか静かだと思ったら、あいつがいないじゃないか。言彦はどこだ?」

 二度寝した私を食人くん共々ここに連れてきたのはあいつに違いないのだから、ここにいるはずだと幻実くんに尋ねるとミニカーを取り落とした。……ミニカー?

「……言彦?」

 おいおい、随分と子供っぽいものを持ってるな幻実くんは。と彼を見た私の表情は強張った。幻実くんが目を見開いて、言彦の名前を聞き返してくる。

「……姉ちゃん、あいつはもう死んだだろ、自分で死を選んで」

 世界の壊れる音がした。
 
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