シリーズ

□ある一つの可能性
4ページ/6ページ


 やはりと言うわけか、私も食人くんもあの言彦サンタによって不知火の里へと連れてこられていた。

「まあ、原稿は出来てるからいいか……」

「いいよな、名前ちゃんは。僕なんて甲虫類の毒抜きについてのレポート書かなきゃ」

 いちいち書くのがかったるいらしい。身体で覚えているから書く必要性が感じられないだとかで、一度単位を落としかけていたのは気のせいでもなんでもない。本当にあったことだ。

 今、私は大学に通いながら、週刊少年ジャンプで連載をしている。つまり、漫画家だ。言彦から聞いた英雄時代の話に私の経験談などをふんだんに盛り込み、さらに「取材」をしてリアリティーを増加させたものを一つ描いている。

 高校時代に岸辺露伴に似ているだとか言われていたが、現実になってしまったなと苦笑する。それもこれも、言彦があんなに血湧き肉躍る冒険譚を語ったせいだ。気付いたら、漫画が出来上がっていた。

 歴史の奥底に忘れら去られていた言彦の冒険譚が。
 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ