シリーズ
□ある一つの可能性
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「……とにかく、私は二度寝する。まだ眠いんだよ、この馬鹿」
言彦をリビングに放置して私は寝室へ戻ったのだが、そこのドアはぶち破れていた。というか、壁ごとやられている。あの野郎、いくら私が印税で稼いでいるからってあの野郎……
そんな怒りを静めるように、ベッドの中に潜り込む。まさか玄関までは壊していないだろう、と目を閉じた。………。
「……布団が冷たい」
「名前、これに入れば温かいぞ」
「ああ……」
もぞもぞと突き出されたものの中に入る。確かにこれは温かい……
目を覚ますと、木造の天井が見えた。ベッドじゃなくて、敷き布団に寝ている。
「うわっ!姉ちゃんの名前書いたらホントに姉ちゃんが来た!」
普段より三割増しで髪が逆立っている幻実くんが開かれたばかりの襖に立っていた。……寝巻きが裏返しになってる。しかも、もしかして身長伸びてない……?成長しきる前に成長期が終わってしまったんだろうか、彼は。
「うわーうわー、なんか前より髪伸びてるし知らないパジャマ着てるし、あれ、おっきくなった?何がってそりゃあ――あべし!」