シリーズ
□好きだから
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「名前ちゃん!手をッ!」
「!」
後ろを振り向くと、あの猟師が壁の上にいた。追い詰められた時にも確認したが、目測の高さは二メートル。周りに散乱している物や箱に登れば一メートル。
猟師はそこから私に向かって手を伸ばしていた。どうやら、私をそこまで引き上げるつもりらしい。
「お前は委員会連合の……!何故ここにっ……!」
後ろで半纏の苛立たしそうな声がする。息が荒い。どうやら、半纏のほうにもかなりの疲労が溜まっているようだった。
それでも、私のほうが疲労している。足はもう限界だ、呼吸のための肺も限界。でも……!このままじゃいけない!
「ぐ、ううっ……!」
私は殆ど感覚の無くなった足、千鳥足で、けれども一生懸命にがむしゃらに走って近寄り、手を伸ばした。ぱしっと熱い手に掴まれる。
「よっと!」
「っ!」
一気にぐいっと引き上げられ、私達は倒れ込んだ。
まずい……起き上がれない!焦ったけれど、足に力が入らない私と違って、猟師はすぐさま起き上がると私を抱え上げた。猟銃は背中に担がれている。