シリーズ
□越える
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「I have been ready at your hand」
「……ん、」
意識が、深いところから引き上げられていく。微かに聞こえてくるこれは……子守歌……?
「To grant whatever──名前?」
小さく身動ぎをすると、名前を呼ばれた。ゆっくりと目を開く。誰かが私の顔を覗き込んでいた。
「起きたか。目覚めはどうだ、快調か?」
「……え。半纏、さま……!?」
何故ここにいるんだ。っていうか、おい!何でこいつが口を利いているんだ!不知火の里で私が住めるように手回ししてくれたらしいから、敬語を使ってはおくが……
「えっと……快調、です」
ここは一体……と、身辺を見回そうとして、半纏に抱えられていることに気付いた。胡座をかいた上で横抱きにされている。なんだこの子供扱いは、と内心いらっとしたが、顔には出さない。
しかし、気を失う前のことが思い出せない。私は一体何をしていただろう。
「……半纏さま、ここは何処ですか。初めて見る場所なんですけど」
「箱庭学園の敷地内だ」
「学園……?いやあの、あそこにドリンクバーあるんですけど」
「あれは俺の私物だ、貰った」
何で学校に私物を置いているんだこの男は!しかもドリンクバーが私物だって!?
「あ……そうですか」
ドリンクバーそのものを貰うだなんて、こいつは頭がどうかしているんじゃないだろうか。用意したほうもトンデモなんだろうが。
しかしこの後、私は本当にそうであることを知ることとなる。