シリーズ
□らしくないが
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「言彦!!この私が森に出かけるまでの一時間の為だけにッ!その為だけに対戦の準備をしてやったというのに、一体どこをほっつき歩いて……ん?客か?」
口調が外見に、外見が口調に伴わない女が突然現れた。ポコポコという擬音を立てて獅子目言彦を怒鳴りつけていたが、私達に気付くときょとんとした表情を見せた。
あどけなさがあり、見たところ私達と同じくらいの年か──いや!私はこいつを知っている。弟君の影武者で、よく弟君を迎えに校門前来ていた。
やはりこいつも不知火だったのか、と私はそう結論付けた。
そんな私を見て、弟くんの影武者は鼻を鳴らす。
「見たところ、無様にも言彦に壊されたようだな。不知火を連れだそうとしているのだから、仕方がないともいえるが……まさか、さっき来た客は君達なのか?」
そこで私はおかしなことに気が付いた。
こうして足を止めてしまっているというのに、獅子目言彦が攻撃をしてこない。それというのもこいつが、弟くんの影武者が現れてからだ。
「……形式上は客になる。貴様は鶴喰鴎の影武者だな?名前を聞かせてほしい」
こいつと一緒なら、無事に里を抜けられるかもしれない。事情は知らないが、もしかすると……それが最善の策なのかもしれない。