シリーズ
□だから
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「確か、この辺って言ってたよなー……」
名前が傀儡の部屋に行ったっきりだから、僕は例の森へ向かうことにした。もしかすると、その猟師がいるかもしれない。
コックの恰好以外の特徴は聞いていないけれど、アイクに似ているってことは髪が青いか声がデカいかってところだろう。
「聞いてくれよ錯悟くん!私は今日、素晴らしい人に会ったんだ!」
たとえ恋じゃなかったとしても、名前はきっと──
がさり、と後ろの方で葉音がして振り返る。
「確かこの辺りで……」
「おい、男ならいたぞ」
家庭科部にいそうな女子と男子が現れた。これ以上踏み込まれたら里内だ、と警戒しかけた僕ははっとした。
男子のほうはコックの恰好で猟銃を担ぎ、その上青い髪をしている。
「………」
いくらなんでも展開が急すぎる。でも、本当なら丁度良い、と声をかける。かなりの確信を持って。
「──もしかして、きみ……名前が会った猟師かい?」
「僕は猟師じゃなくて、猟理人だぜ。って、名前!?名前の知り合いなのか君ッ!?」
「ぐわっ……!」
勢いよく肩を掴まれ、揺さぶられる。避けようと思えば避けられたけど、無害を装っていたほうがいいに違いない。と、されるがままに揺すぶられていたけど。
……本当に気持ち悪くなってきた。声も大きいし。完全にアイクと特徴被ってるよ。完全じゃないけど。
内包物リバースの危機が迫ってきた頃に、女子がようやく男子を止めに入った。
「その辺にしておけロード、死ぬぞ」
ロードって何人(なにじん)だよ。
「あ、そうだな」
「うう……」
口元を抑えて、近くの木に手をつき、「おかしい……」と僕は思った。
僕は二人のキューピッドになりに来たはずなのに、なにこの仕打ち。こんなの絶対おかしいよ……