シリーズ
□だから
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名前がいなくなってからの居間は、妙に静かだった。
「猟師……か」
「本当に……素晴らしかった。凄腕のスナイパーだったッ!」
新鮮だったんだろう。猟師なんて、現代じゃそうそう見れないものだから。
名前はいつもそう。気に入ったものがあると、ああなる。自分にないものを羨んで欲しがって、その才能をスキルに変えて奪う。そして、スキルを自分の身体に融解して独占するんだ。
そのとんだ収集癖のせいで、正直僕も幻実も全く敵わないくらい名前は強い。この里内で名前に勝てるのは、言彦と傀儡くらいだろう。
けれども、今回のは少し違う気がした。
「名前を聞いておけば良かった」と名前は嘆いていたけれど、その気になれば何の情報もなしに見つけ出せるはずなのだ。実際にふた月前はそうしていた。
もしかしなくても名前は、その猟師そのものが気に入ってしまったのかもしれない。
名前は天然物の不知火なだけで不知火一族の人間じゃないから、万が一嫁に行ったっておかしくないのだ。掟における問題は発生しない。
ただ、そうなると……
「姉ちゃんが……名前が……」
「猟師とは……新しくない」
この鬱ってる二人が問題だ。それもかなり。
幻実は毒を吐きまくってるけど……かなりのお姉ちゃんっ子だ。そして、名前以外には猛毒しか吐いていない。シスコンですね分かります。
言彦は、文字通り行かせないつもりだろう。理由はまあ、置いておくとして。
僕は……嫁に行ってしまったほうがいいと思った。名前は自由に里と外を行き来できるのだから、一緒にいることだってできると。