シリーズ
□だから
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「今日は会えないんじゃないかな……多分今頃、仲直り中だし……」
言い終わる前に、男子が「だ、誰とっ!?」と勢いよく食いついてきた。反応早すぎだよ僕の言葉遮るなよ。
まあ、後の祭状態になるくらいなら、早い方がいいかと自己完結して、僕は親切にも答えた。
「兄……だけど」
「そ……それなら良かった」
ほっと肩を下ろした男子に、女子が「バカジャネーノ」と言いたげな目を向ける。怖い!女子ってこんなに怖い生物だったっけ!?
思わず我を忘れて内心叫ぶ。同じ仏頂面でも生煮とは全然違う。
……いや、仏頂面って言い方が失礼なのは分かるけれど、僕現代文も古典も苦手だ。だから、他の言い方が思いつかないっていうか多分……間違いなく知らない。
うーん……変わらないってことで、プラチナ顔とでも言えばいいだろうか。でも、それ言ったら斬りつけられたし、アウトなんだろう。女心ってよく分からない。
いや、もういいや。そのことは後で考えよう。さっさと本題に入ってしまおうと口を開く。
「で、きみ……名前のこと、好きでしょ」
「うぐっ!……そ、そうさ!僕は、あの子が好きだッ!」
一瞬で顔を真っ赤にして、アイク似男子は叫んだ。
顔が真っ赤な割には堂々としていて、……うん、名前が気にかけるわけだよ。会話を交わしたかは知らないけど、多分銃の腕の良さから察したんだろう。
でも、幻実相手なら冷笑を買ってただろうね。……まあ、相手が名前だってことを踏まえると、むしろ般若化か無表情かな。
般若化って言っても、目や肌が赤くなったりなんてことはない。ファンタジーやメルヘンじゃないんだから。
とにかく、名前のことがそういう意味で好きなら丁度いい。
「なら、頼むよ。名前を貰ってくれ」
「も、貰うっ!?」
声を裏返らせた挙げ句、男子は石化した。