シリーズ

□まいった
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「そういえば名前……最近アイクばっかり使ってるよね」

「ああ、そういえば。なあ姉ちゃん、何で?遅いとか鈍足とか暴言吐きまくってるけど、結局使ってんじゃん」

 二人にそう言われた私は、一瞬ぎくりとした。

 クエストは無事終了して、今は精算画面だ。報酬が爪ばっかりなのはどういうことだ。ちなみに九割方言彦無双で、私も少し参加した。

「アイク?なんだそれは」

「青い髪の剣士だよ言彦。大!天!空ッ!とか叫んだりしてて、騒がしいっていうかまず声がデカい」

 何気に幻実くんによる説明が酷い。やっぱり説明役は錯悟くんに限るな。幻実くんだとかなり私情が混じる。ある意味分かりやすいが。

 と、そこで「あれ……」と錯悟くんが何かに気付いたかのように私のほうを向いた。

「名前、もしかしてこの前の猟師が、アイクに似てるんじゃ──」

「ヘブンズ・ドアアアアアアーッ!!!」

「ぎゅッ!!」

 お、思わず手が先に出てしまった……。しかも何でヘブンズ・ドアーって叫んだ私。露伴は好きじゃないぞ私は。

 錯悟くんは私のパンチを食らってダウンしてしまった。でもまあ、錯悟くんならすぐに起き上がるだろう。幻実くんよりは筋肉あるし。というより幻実くんがひょろ……筋肉関係ないなこれ。

「……え、なに、猟師って何のことだよ名前!っていうか猟師なんて時代錯誤なやつがいるのか!?」

「時代錯誤だとッ!!?コックの格好してたし普通に現代っ子のはずだッ!でも猟師で間違いないはずだよ。本当に……素晴らしかった。凄腕のスナイパーだったッ!」

 思わずハイになって拳を固く握り締める。思わず近付きすぎて顔を見る余裕はなかったけれど、綺麗な青い髪で、なんていうか──

──まあ、そのせいで腕のほうばっかり見てたことで、ついその才が欲しくなっちゃって──傀儡に止められたわけだけど。

「ぐううッ……多分年近いと思うんだけどなーッ。でも制服じゃなかったから、どこの学校かも分からなかったし、ああっ!しまった!……名前を……名前を聞いてない……私は名乗ったか?名乗ったっけ?くそッ傀儡のせいだ!ええい!こうなったら会ってくるッ!」

 私は錯悟くんを畳の上に寝かせて、居間を飛び出した。
 
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