シリーズ

□変われない
7ページ/9ページ


 私が駆けつけたのは、既に言彦の去った後だった。既に錯悟が名前の傍にいて、私は足を止めた。

「ふん、君は私がこの程度でくたばるとでも思っていたのかッ!何も問題ないさ。わけの分からないことも言い出すし、君のほうこそ大丈夫じゃないな」

 周囲の状態に比べて外傷の全くないことに驚いたものの、それに安堵した私は違和感に気付いた。

「反射的に心を盾にしたけれど……まあ、いいや。まさか治せないものだとは思わなかったけど、何が壊れたのか分からないし……別に支障はないか」

 はあ、と名前は衣服についた土埃を軽く払って立ち上がる。

「着替えたら、私は言彦について帯に聞いてくるよ。錯悟くんはそれまで勉強をするなりして、時間を潰していてくれ」

 それだけ言うと、名前は錯悟を置いてどこかへ走り去っていった。

 友達が何かを壊されたと知って、錯悟がそんなことをできるはずもないのに。名前は錯悟の気持ちを考えずに言った。

 協調性というか思いやりというか……そういったものが、感じられない。だとすると、名前が壊されたのは──

「錯悟!大丈夫ですか?名前が壊されたのは、恐らく協調性で……」

「傀儡っ……!」

 呆然と突っ立ったままの錯悟に駆け寄ると、急に錯悟は慌てだした。私を見て。

「それは、そのことは、いいんだ。僕は平気だから。でも……きみは平気じゃ済まされない」
 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ