シリーズ
□変われない
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「半纏さまが子供を、ねえ……」
「子供って言っても、幻実や錯悟と同じくらいの年さ。何でも、能力がかなり驚異的で脅威らしい」
敷かれた布団の中ですやすやと眠っている、おそらく小学校高学年であろう少女はただの子供にしか見えなかった。
帯曰く……帯曰く、勘当されたとのことだが、その流れには何らかの作為を感じざるを得なかった。
──まさか、そんなはずがない。こんな一人の人間の為に、半纏さまが手間隙をかけるはずがない。そう思って可能性をしまい込む。
世話役を押しつけられてしまった私は、特に何をするわけでもなく、ただ枕元に座っていた。
何故これを世話好きの蜃気郎に任せなかったのか。別に蜃気郎でなくたって構わない。仮輝や偽造でも良かったはず、否、彼らに任せるべきだ。
私に任せるのは間違いだと、それは私自身が誰よりも分かっていた。
ふと身体がぴくりと動いたのを見て、私は思わず少しだけ身を固くした。
「ん……」
少しの身じろぎの後、目蓋が開かれる。とろんとした目は睡眠不足を物語っていて、私は早く寝てしまえばいいのにと思ったが目が私を捉えたままだ。挨拶をしなくてはならない。仕方なく口を開く。
「おはようございます、お目覚めの気分はいかがですか?」
「──寝る」
ばんやりしていたかと思うと、かけ布団を頭まで被ってしまった。すぐに寝息が聞こえてきて、はあ……と息を吐き出す。
それが、初めて聞いた名前の声だった。