シリーズ
□それだけで良かった
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ところで、僕は名前に聞きたいことがあった。
「で……結局名前は何を賭けたんだい……?」
丁度きりのいい所で尋ねると、名前は「うぐぅ!……」と顔をひきつらせた。
……何か、嫌な予感がする。幻実もそれが分かったのか、名前の肩をがしりと掴む。
「そうだよ!何賭けたんだ姉ちゃん!」
追い討ちをかけられた名前は苦々しい顔になり、小さくぼそりと呟いた。
「……を賭けた」
「何だって?」
聞こえなかったと言いたげに悪人面した幻実に、名前がプッツンする。
「……ああッ!いいよ!言ってやるさ!そんなに聞きたいんだったら無料で答えてやるッ!そうだよ!私は!この『不知火名前』を賭けたんだァーッ!」
「………」
……?……いや、そんなまさか……
現実逃避しかけた僕を幻実の「はあ!?」という声が引き戻す。
「おっ前……!お前!お前何やってんだよッ!だからぷよぷよは止めろって言っただろ!?あんなに!」
「ぷよぷよっ……!?それならスマブラのほうがまだマシだったはず……!」
馬鹿だ、馬鹿がいる。
言彦に手痛く負けたっていうのはちらって小耳に挟んだけれども、だからって……だからって!
まさかぷよぷよ勝負に『個人』が委ねられるだなんて一体どこの誰が思っただろう。制作者だってそんなこと思いもしなかったはずだ。というより、そもそも日本でのギャンブルは──
「とにかく!とにかくだッ!言彦に私の親権っぽいのが渡ってしまったんだッ!」
そう叫んで、名前は頭を抱え込んだ。
ああ……あの過保護の元じゃ、もう結婚できないだろうね名前。
でもこれで良かったんだ、と僕は肩をなで下ろす。
誰かと結婚した名前なんて、想像できない。第一に、プッツン名前の結婚相手が見つかるかどうか……
僕はただ、この三人で楽しく遊んでいられれば、良かった。
それだけで、良かったのに──