シリーズ

□それだけで良かった
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「──まあ、外に出たときに貰いに行けばいいだけの話か」

 数十分後、その結論に至ってしまった名前は突然「あ!」と何かを思い出したように声を上げ、立ち上がりかけていたのを座り直した。

 貰いに行けば……ってまた犯罪行為を働く気か。

「そうだった、聞いてくれよ錯悟くん!」

 また何かが始まった……。名前が常時俺様ペースなのは、同情とか協調性がぶっ壊されたからだ。

「幻実くんが!幻実くんがねッ!幻実くんの頭のネジがぶっ飛んだんだッ!君も驚くぞ!絶対にッ!」

「幻実が……何か、やらかしたとか……?」

「そう!幻実くんがやらかしてくれたのさッ!それもとんでもなく、だ!とっ、とにかくあれだな!本人を呼んだ方が早い。お―い!幻実く―――ん!」

「呼んだ?」

「!」

 間髪入れずに戸口に現れたのには少し驚いたけれど、大体はいつものことだ。何か別のことに違いないけれど……とりあえず見た目は普通だった。

「ああ、呼んだよ幻実くん。まあ、とりあえずそこに座れよ」

 我が物顔で椅子に座るよう促した名前。……あれ、ここ僕の部屋じゃ……。そんな僕の思考は次の瞬間凍りついた。

「?分かったよ姉ちゃん」

「っ……!?」

「こういうことさ、錯悟くん。驚いただろう?」

「おっどろいた……!驚くに決まってるよ……!」

 幻実から名前に視線を戻せば、そこにあったのは安定のどや顔。

「名前きみ、一体何を……!」

「私の悪戯だよ、名前を驚かせるための」

 何をしたのかと思ったけれど、答えたのは幻実。そこにあるのはいつものポーカーフェイスのはずなのに、どこか悔しげに見えた。
 
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