シリーズ
□それだけで良かった
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「何てことだ……最高だッ!素晴らしいッ!素晴らしいよ君ッ!」
「なっ……!」
突然、見知らぬ女の子にそんなことを言われた。僕は今、仕留めた獲物を確保したところで、思わず向けてしまった猟銃を下ろす。
しかし、こんな奴さっきまでいたか?
「君、一体どこから……?」
「どこからだっていいじゃないかッ!私は感動しているんだ!邪魔しないでくれるかい!」
……いや、そもそもこの辺りは僕しか来ないエリアで──
「なんて素晴らしい狙撃の腕なんだ!」
「ッ!?」
一体!いつ!こいつはこんなに近くまで来たんだ!?
僕の手を掴み、名前も知らない女の子はきらきらと目を輝かせた。一瞬どきりとして、でもすぐに言葉を失う。この子──僕自身のことは、何も見ていない。
「実にいい!気に入ったよ!君の腕前……これは素晴らしいッ!」
妙に上擦った浮かれたような声。視線の一切は僕の腕、特に手に注がれていて、何だか居心地が悪い。
この子は、僕の目から見ても明らかに何かあるはずものが欠落していた。