シリーズ
□そこにいるだけで
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「幻実くんと錯悟くんとゲームして遊ぶ準備がしたいから、私の家に……、!」
周りの空気が一変し、私は思わず口を噤んだ。
「儂は放置か」言彦が言った。音はそれだけだった。たった一言、重苦しくなった空気にそれは沈み込む。
この静けさの中で声を発するべきか迷ったが、答えないと別の意味で静かになるだろうと思って結局答えた。
「放置だって?私はただ──」
そこまで言って、私は言葉を見失った。急に、その先の言わんとしていたことが言えなくなったのだ。
「ただ?」と言彦が繰り返す。いつの間にか、歩みは止まっていた。
そういえば、と私は他人事のように思い出した。
帯曰く、彼ら曰く──私は「お気に入り」で、だから一人で言彦を押さえ込むことができる。
そんなことは分かっていた。役を終えて帰ってくるたびに何かしらのちょっかいをかけてくるのだから、気付かないほうがおかしいくらいだ。
この「スキルを溶解するスキル」が理由だろう。スキルを溶かして本体の力にするスキル。
溶解の際にスキルそのものは消滅して譲渡不可になるが、言彦に壊されることはなくなる。使い方次第では、勝てはしなくても言彦と対等に近いところまで漕ぎ着けることができる。
「遺伝子を破壊するスキル」をこの身に溶解していることだけを考えるなら理論上は言彦を倒すことも不可能ではないが、理論を越えたその存在そのものに覆される。