シリーズ

□そこにいるだけで
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「は?って……君さあ!まだ嫁入り修行してないじゃない!」

 嫁入り、嫁入り……

 蜃気郎の言った言葉を反芻してはたと固まった後に、私はプッツンした。

「お前は何を言っているんだッ!後でぶん殴ってやるからな!蜃気郎ッ!よっ、よ、嫁入りなんて私はしないッ!」

「殴るのなら、是非ともこの私を!」

「きさまは呼んでないって言っているだろうがッ!役にはまり込みすぎて殴ったりしたら喜ぶからな、絶対殴ったりしないぞッ!」

「ふふ、私には優しいんですね……」

「気色悪いから頬を染めるなッ!」

 駄目だ、言葉が通じていない。すぐにキレてしまう私の会話相手があの二人なのだから仕方ないとは思うが……

「はあ……偽造や仮輝は今いないのか?蜃気郎」

「偽造はおつかい。仮輝は……今頃バケツでも持って立たされてるんじゃない?」

「あ、あいつ一体何をしたんだ……」

 バケツ持って立たされるとかどこの小学生だ。眼鏡をかけているし、のび太って可能性もあるな。どちらにせよ、いないのならどうでもいいことだ。

「……言彦」

 久しぶりに言彦を呼ぶと、間髪入れずに「何だ」と返ってきた。いくらなんでも反応が早すぎるだろ。なんてツッコミは野暮か。

「もう叫ばぬのか」

「疲れたんだよ」

 この疲労感は、七割方お前のせいだと言いたい。(残り三割は傀儡と蜃気郎で分け合えばいい。)
 
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