BASARA短編

□兄さんは腹黒コンビ
1ページ/2ページ

 

私には二人の兄が居る。
兄と言っても血は繋がっていない。

「あ、お弁当無い」
「珍しいね、忘れるなんて…」
「まぁ、朝バタバタしてたから」

私に向かうように座っているこの妖艶な美少女は市。
このクラスでは唯一私と仲良くしてくれる。
私は別に人当たりが悪い訳ではない。
話してくれたら話返すし、内容だって盛り上がっている筈だ。
そんな私に何故友達がいないのか?それは単純な話だ。

「夢」
「あ」
「主ら邪魔よ、ジャマ」

教室の入り口で我が物顔で仁王立ちしているこの人達が、私に友達が出来ない原因だ。

「兄さん達…」

弁当であろう袋を持って仁王立ちしながら辺りを睨む元就兄さん。その横で車椅子を転がしながらクラスメイトに邪魔だと手を払う仕草をしている吉継兄さん。
この二人はこの学園でも有名な腹黒コンビとして名を馳せている。

「主が忘れ物とは、今日は星が降りやるか?」
「我が態々持ってきてやったのだ、感謝せよ」

ヒヒヒッと引き笑いをする吉継兄さんに対し、憮然とした態度で弁当を差しだす元就兄さん。
二人はこの学園の二年生に当たり、私の一つ上になる。

「ありがとう兄さん達」
「では、行くか」
「あいあい」

礼に頷いて二人は教室を後にする。
市がポツリと「相変わらずのオーラね」なんて言って周りの空気が冷え切っている事を教えてくれる。
と、ビュゥとまた吹雪が吹いたように教室の温度が下がった。

「何をしておる、夢。貴様も来い」
「え?」
「弁当を届けてやった故、我等に付きあえ」

ユラリユラリと手招きをする吉継兄さんに、早くしろといつもの数倍睨みを利かせる元就兄さん。
私が市を見れば「鶴ちゃんの処にいくから大丈夫よ」と儚く笑んで言ってくれた。
それに申し訳ないと「ごめんね」と謝りを入れ、弁当を持って二人の後ろを付いて行く。

「もう、市とご飯だったのに」
「我らよりあの小娘を取るというのか?やれ、夢は薄情よな、ハクジョウ」
「全然思ってないでしょ。元就兄さんも」
「我は知らぬ。第一に優先されるのは我であろう」
「何でだよ」

何を置いても自分優先の元就兄さんはとても生き難い人だ。それに病を患って車椅子で行動している吉継兄さんも大概に捻くれている。正しい日本語では表せないくらいに。
弁当を吉継兄さんの膝に乗せて、その車椅子を押せば、何処となく吉継兄さんが嬉しそうに笑む。

「で、何処行くの?」
「何、三成が屋上で一人寂しく待っておるのよ」
「それって二人が待たせてるんじゃ…」
「我は一人で貴様の処へ行くと言った。それが付いてくると言ったのだ」
「元就一人では心許ない故なぁ」

きっと吉継兄さんの判断は間違いではないだろう。



>>>
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ