ミモザの咲く頃に

□第1章 ディアッカの借り
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あっけにとられたイザークは声も出せずにいる。
(確か、ザフトの女性士官の・・・)

テーブルの下に隠れていたのは、なんとルナマリア・ホーク。

廊下から声がした。
「イザーク、何処だ!」

眉間にシワを寄せたイザークを見て、ルナは助け舟を出す。

「お困りですか?貴方もココに隠れます?」
ルナは人ひとりは入れるくらい、テーブルクロスを捲り上げる。

イザークは扉の外と彼女を見比べて、テーブルの下に潜り込んだ。
テーブルクロスの内側で、ふたり息をひそめる。

部屋の扉が開き、ディアッカの悪態が聞こえて、再び扉の閉まる音がする。
足音が遠くなっていくのを聞いて、ふたりは肩の力を抜いた。

「イザーク・ジュール隊長ですね。」
彼女が小さく敬礼して彼を見る。

イザークもあまり話した事は無いが、彼女の名前は知っていた。
「たしか、ルナマリア・ホーク、だったか?」

「はい。大戦の英雄とお話できるなんて光栄です。」

テーブルの下で、光栄も何も無いだろうと思いながら、イザークは社交辞令で小さく頷いた。

ルナは快活に話続ける。
「私、さっき無理矢理見合いをさせられそうになりまして。隠れている最中なんです。」

いつまでこのふざけた状況でやり取りを続けなければならないのかと思いながら、イザークも返答した。
「実は俺もだ。見合いから逃げてきた。」

「わぁっ、同じですね!わたし見合い結婚する気はないんです。ジュール隊長はどうして逃げたんですか?」

自分はどうしてこんなところで話し込んでいるのか。
だんだん不機嫌になりながらイザークは話していた。
「結婚なんぞ、俺はまだ考えた事もない。仕事優先だ。」

そういえば、イザークとアスランは昔、同じ隊にいたはずだとルナは思い出す。
「ジュール隊長は仕事熱心ですね・・・アスランとは大違い。」

イザークは知り合いの名が出た事で、ルナの話に興味がわいた。
「アイツがどうかしたのか?最近准将に昇格したとは聞いているが。」

ルナはイザークの話し方からアスランと彼が親しいように感じた。
「いえ、あの・・・私の妹が、オーブ軍でアスランのそばにいるんですけど・・・最近アスラン、仕事よりプライベート優先らしくて。彼女でもできたんじゃないかなって。」

(カガリ・ユラ・アスハの事か?)
付き合っているのかどうかは知らないが、アスランがそんな腑抜けな状態とは聞き捨てならない。
「どういう事だ。昔のアイツなら考えられん事だが。」

思いのほか食いついてきたイザークに、ルナはちょっと面食らう。
「独身寮を出て引っ越してから、アスランの残業が減ったみたいで。妹がほとんど会えなくなったって言ってたものですから。」

「残業しない事が、プライベートを優先していると?お前の妹はそれだけで、女性問題のせいだと言うのか。」
女というものがよく分からないと、イザークは思う。

「早く帰って、料理とかするようになったらしいんですよ。信じられます?あのアスランが。」

「アイツが料理?」
イザークはどうやってもエプロン姿のアスランが台所に立つ姿が想像できなかった。
「それが本当なら、もう俺の知っているアスランではないな・・・」

「ね!怪しいでしょう?部屋に来る誰かの為に作っているんですよ、きっと!」

ふたりはテーブルクロスの内側で、話に夢中になっていた。
部屋に人が入ってきた事に気付かない。

怒り心頭のディアッカが鬼の形相でテーブルクロスを捲り上げた。
「みーつけた!信じらんねぇ、ガキのかくれんぼじゃあるまいし。大の男がこんなところに・・・」

ルナの声が大きくなる。
「ディアッカさん!」
「ルナマリア!?」

イザークは不思議に思う。
「知り合いか?」

「「合コンで。」」

ハモるふたりにイザークは低気圧な視線を送る。
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