僕と彼女と紫水晶
□第8章 ガールフレンド
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家まで帰ってきた二人。
ぐったりとしてタクシーから降りる。
「アスラン・・・もしよかったらチョットだけ、トイレ貸してくれない?」
なぜかキラは自分の家に帰らずに、アスランの家に来た。
カナリアの格好をしたキラが自分の家をうろうろしている・・・凄く嫌な気持ちになったアスランは、トイレから出てきたらすぐにキラを追い出そうと決めた。
リビングにきたキラを見て、アスランとお手伝いさんはハッとする。
キラがカナリアの変装を、トイレで解いてきたからだ。
アスランは低気圧な眼差しをキラに向ける。
「そうやって、変装を解いてから家に帰るんだ・・・。」
まだ怒っている様子のアスランから、キラは目をそらした。
「うん。流石にスカートじゃ帰れないし。」
「出かける時は、服を持ちだして外で着替えてたの?」
「へへっ、おかげでトイレで着替えるのが早くなっちゃった!」
アスランは不安に思った事を質問した。
「男子トイレで着替えてから、女装で出ていくの?」
ケロッとしてキラは答える。
「ううん、車椅子用のトイレで着替えてた。あそこって男女共用でしょ?」
アスランは、ホッと息をついた。
それと同時に反省していない様子のキラにイライラする。
「髪は?どうしてたの?」
「演劇部の子にウイッグを借りたんだ。ちょうどいいのがあって助かっちゃった。」
キラは生き生きと自分のイタズラの種明かしをした。
「カラーコンタクトも見に行ったんだけど、値段が高くって・・・やっぱり演劇部にあった色付きメガネをかりてさ。」
得意そうに話し続ける。
「役作りもしたんだよ!女の子っぽくみえるように仕草とか練習したんだ。文字もアスランにバレないように、丸くカワイク書く練習したんだよ。」
アスランはあきれた。
その努力を夏休みの宿題に向けたらいいのに。
「一番困ったのが服!一枚しかないから困っちゃって。汗かくから洗濯がさぁ・・・。あ、でもスカートって凄く風が通るんだ。女の子の服って夏はいいかも!」
(コイツ大丈夫か?)
女装を否定的に見ていない幼馴染に、アスランは不穏なものを感じた。
「お洋服、洗濯しておきましょうか?」
お手伝いさんが気を利かせる。
「ううん、大丈夫。夜中にこっそり洗濯するから。」
アスランは、眉間にシワを寄せた。
「夜中に?おば様が気付くんじゃない?」
キラは指を二本たててピースサインをする。
「2回洗濯したけど、バレなかったよ?」
得意そうに言ったキラは、不機嫌なアスランの瞳ににらまれて、居心地悪そうにした。
「帰ろっ、かな。」
キラが立ち上がる。
アスランも立ち上がった。
「僕も行く。」
「どうして、アスランも来るの・・・まさか、母さんに話す気!?」
「言いつけたりしない。ちょっと、おば様の様子が知りたいだけ。」
キラは胡散臭そうにチラチラとアスランを見ながら、自分の家に帰った。