ふたりの夏やすみ
□第10章 夏はキミのもの
1ページ/6ページ
おもちゃショーから一週間がたった。いまだに騒ぎは報道されない。ネットの書き込みもほとんど無くなった。
キラは家に帰った。
相変わらず部屋に閉じこもっているアスランも、キラとハロがいなくなって少し退屈を感じ始める。
『ハロを調べるために図書館で借りたロボット工学の本、そろそろ返しに行かなくちゃ。』
返却日を思い出して、本を手に取ったアスランは、ぱらぱらとページをめくった。
『ハロを分解するの、面白かったな。』
そのまま本を読み始める。
僕、電子工作が好きみたいだ。
玄関のドアが開く音がした。またキラが、遊ぼうって誘いに来たのかな。
アスランの部屋にノックの音が響く。
「アスラン?」
会いたかった人の声がする。
アスランは本を取り落とし、走って扉を開ける。
母、レノア・ザラが微笑んで立っていた。
「母上、どうして!?」
視線をあわせる様にひざをついてから、レノアは驚いて立ち尽くしている息子を抱きしめた。
「驚かせてごめんなさい。あなたが部屋に閉じこもっているって聞いて、心配で来てしまったの。」
母の背中に遠慮がちに腕をまわして、アスランはしがみついた。
母上のいいにおいがする。
「お仕事は?」
「お休みを貰ったわ・・・一日だけだから、とんぼ返りになってしまうけれど。」
母上に心配をかけてしまった。
「ごめんなさい・・・」
「謝るのはお母さんの方よ。あなたにさみしい思いをさせてしまって・・・ゆっくりお話したいわ、アスラン。まずはお風呂に入ってらっしゃい。その間に、お母さん夕食を作っておくから。全部あなたの好物にしましょう?」
アスランの額にキスを落として、レノアは笑った。
アスランも嬉しさが顔から溢れ出した様に笑って、急いでお風呂に入ることにする。
「すぐにお風呂に入ってきます、僕も母上とたくさん話したい!」
飛ぶようにお風呂場へ走っていくアスランを見たお手伝いさんは、レノアに言った。
「奥様、ご一緒に入られてはいかがですか?その方がたくさんアスラン様とお話できますし。料理の下ごしらえは私がやっておきますから。」
レノアは少し考えてから答えた。
「そうね、久しぶりに。」