ふたりの夏やすみ
□第9章 ハロの魔法
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おもちゃショーから帰ると、アスランは自分の部屋に閉じこもった。
カナリアの為とはいえ、自分達のしたことはイタズラでは済まされない。
いつアスランが犯人だとばれるのか、気が気ではなかった。
不思議なことに、あれから3日たってもニュースで騒ぎが報道されない。
ネットに書き込みはあったが、信憑性が低いためか、時間がたつごとに書き込み量は減ってきた。
アスランは、ハロを両手に持って上に掲げ、ベットに寝転んだ。
「キラ、ハロは誰かが利口に改造した」
アスランはつぶやいたが、カナリアは話さない。カナリアのハロはあのまま壊れたか、騒ぎでなくなってしまったのだろう。
ハロを両腕に抱きしめて、一人不安をつのらせる。
バタンとドアが開いて、キラが入ってきた。
起きようとして、アスランは体を反転させる。ハロを抱きしめたまま、体の下にギューっと押しつぶしてしまった。
「アスラン、母さんがロールキャベツを持ってきたよ・・・」
キラは言いかけてやめた。扉の前に立ち尽くす。
歌が 聞こえる
♪この子にひとつ ふたりにふたつ・・・
アスランは自分の下敷きになっているハロを持ち上げた。
ハロから子守唄が流れている。
ハロがしゃべるときの電子音ではなく、人間の女性の歌声だ。
キラのお母さんの声に似ているけれど、少し、違う。
『そういえばカナリアが、ハロは子守唄を歌うって言ってた』
アスランは思い出して、キラにそれを話そうと顔をあげ、びっくりした。
キラの瞳から、涙が一粒こぼれおちた。