ふたりの夏やすみ

□第8章 小さな女帝
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1階の青と白の屋根のブースへ、3人を乗せたトライエイジ・バイクは走る。

3人を乗せたバイクはぎゅうぎゅうで、体がくっつきすぎてお互いの顔がよく見えない。
キラとアスランはゴーグルを付けているので、なおさら顔は見えなかった。

「本当に降ろして大丈夫?間違いなく君のお迎えなんだね?」
アスランは念をおす。

カナリアは頷いた。
「間違いないわ。貴賓席から見えていたんだけど、彼のそばを離れる隙が無かったの。」

キラが聞いた。
「彼って、誰?」

「・・・私の事を気に入ってくださっている方。ずっとそばに居るように言われていたの。でも、ハロが、嫌なら逃げて良いんだって言ってくれたから・・・」

「そうだよ。大人なんて気にしないで、子供は嫌な時は逃げて良いんだよ。」
アスランがさとす。

「君は今日、トライエイジ・カナリアみたいにカッコ良かったよ!」
キラも励ました。

カナリアは、力なく微笑む。ふたりともハロみたいな事を言ってくれるのね。
「・・・ありがとう。ハロにもお礼を言いたかった・・・。」

「ハロを、大事にしていたんだね?」
アスランは心を痛めた。カナリアのハロは大丈夫だろうか。

「生まれたときから、ずっと一緒だったの。寂しいとき、ぎゅーってすると子守唄を歌ってくれたわ。最近は、人間みたいに・・・お友達になれたのに。」

青と白の屋根のブースの前に着いた。トライエイジ・バイクからカナリアが降りる。

キラはカナリアを慰めようとした。
「僕たちも、もう友達だからね?」

アスランも約束する。
「忘れないで。僕も君に教えてもらった子守唄、忘れないよ。」

ワタシ ガ オシエタ コモリウタ?

「「またね!!」」
キラとアスランはトライエイジ・バイクを発進させた。

カナリアは混乱した。
私を助けてくれた二人の男の子。
私と『ホークになったハロ』しか知らない事を知っている男の子。
ひょっとして、『ホーク』って、本当は機械のハロじゃなくて・・・

からくりはわからない。でもカナリアはひとつの真実を確信する。

「ありがとう、ホーク!!ずっとずっとお友達よ!!!」
こぼれ落ちそうなくらい大きな瞳から、大粒の涙があふれる。

キラとアスランは大きく笑って、手を振りながらバイクで走り去っていった。
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