ふたりの夏やすみ
□第7章 カナリア奪還
1ページ/3ページ
会場中に非常ベルの様な電子音の爆音が轟いた。
数百台のハロがいっせいに、アラームを鳴らして飛び跳ねる。
会場はパニック状態におちいった。
キラはマイクのスイッチを入れた。
【ピーコック、トライエイジ・アタックバーストだ!!】
アタックバーストとは、二人乗りの特攻バイクフォーメーション。
ピーコックは、僕のことだ。アスランがキラの言葉に反応して走る。
係員が会場の騒ぎに気を取られているうちに、キラとアスランはアトラクション用のトライエイジ・バイクに無理やり乗り込んだ。
キラが運転して、アスランは後ろに乗る。
トライエイジ・バイクは溝から抜け出して、会場の中央通路をまっすぐに走った。
キラが急にスピードを上げたので、アスランは落ちそうになったが、後部座席の高い背もたれのおかげで助かった。
キラが叫んだ。
【本部より入電、】
次は何!?
事態はもう、アスランの理解をこえていた。
【悪の魔皇竜に捕らわれた姫を奪還せよ!姫は3階貴賓室に捕らわれている!】
会場の子供達が騒ぎ出し、テンションをあげて、貴賓室を目指し走りだす。
3階につづく階段に、赤や緑の変身ゴーグルを身につけた子供達が、集まってすずなりになってくる。
その数、百人弱。
キラはトライエイジ・バイクで走りながら思う。
『思ったより人数が少ない。大人に勝てるかな?』
アスランは混乱しながら一生懸命考えていた。
『この騒ぎ、けが人が出る前に、鎮めないと・・・そうだ、子供達は魔皇竜が怖いはず。』
アスランは心を決めて、マイクのスイッチを入れた。低い声で話し始める。
【愚かなヒーロー気取りの子供達よ、わが名は魔皇竜。姫はわが手中にある。命が惜しくば貴賓室に近寄るな!】
会場から大歓声が上がった。貴賓室を目指す子供の数が膨れ上がる。階段は赤・緑・黄色のヒーロー達でいっぱいだ。
その数、二百人超。さらに大パニックだ。
「なんで増えるんだ!?」
アスランもパニックにおちいった。みんなは魔皇竜が怖くないの!?
「あおったの?」キラが聞く。
「しずめようとしたんだ!!」アスランがわめく。
キラはやれやれという顔をした。
「わかってないなぁ。正義のヒーローよりクールな悪役の方が人気あるのは常識でしょ?」
アスランはもう泣きそうだ。
「そんな常識、僕、知らない!!!」
キラ的には結果オーライ、予想を上回る戦力の増強。