ふたりの夏やすみ

□第1章 物置のハロ
1ページ/2ページ

月面の都市国家・コペルニクス。今日の天気は、夏の快晴、ところにより夕立。

人工の海の水平線から、大きな入道雲がモクモク広がっている。

幼年学校の夏休みは、始まったばかりだ。


キラとアスランは一緒にリビングでおやつを食べていた。

キラは口の横にクリームをつけたまま、元気良く言う。
「ねぇ、何しようか?このあと、もう一回ゲームしない?アスラン。」

アスランはおてふきをキラに渡しながら、あきれて言った。
「さっき約束したよ。ゲームの後は宿題のロボット工作やるんだ。」

おてふきで口のまわりのクリームを拭きながら、キラは不満顔だ。
「夏休み、まだ始まったばっかりなのに。宿題なんてまだやらなくていいよ!」

「だめ。おば様が買い物に行く間、宿題して待ってるって約束したんだからな。オレ、工具箱を持ってくる。」
勝手知ったる親友の家、アスランは物置部屋に入っていく。

しぶしぶキラもついて行った。


アスランはぐるっと物置部屋を見回す。
「あれ、工具箱がいつもの場所にないぞ?」

「あっ、見つけた。あそこの奥の棚の上。」
見つけたキラが棚に足をかけて上っていく。

「気をつけて。なんだか奥の方は山積みになってる・・・」
アスランが言いかけたとき、キラは足を滑らせた。

あわててアスランがキラの背中を支えた。キラは目の前にあった古い箱に手をかけたが、箱もろともバランスを崩す。

受け止めきれなくて、ふたりで折り重なる様に倒れてしまった。
遅れて、古い箱や荷物もバラバラ落ちてくる。

「ごめん、大丈夫!?アスラン!」

「うん・・・キラは?」
アスランは痛そうな顔で自分の頭をなでる。

「ボクは平気。」
キラはちょっと心配そうにアスランの頭をなでた。

周りには落ちてきた荷物や箱が散らばっていた。
「あーあ、ちらかしちゃった・・・」
アスランが近くにひっくり返っていた古い箱を持ち上げる。すると、中からけたたましい電子音声が聞こえてきた。
「ハローハロー、ナイス トゥ ミーチュ!」

二人は顔を見合わせた。

「なんだろ!」
ワクワクしてキラは箱を開けた。
アスランも顔をくっつけるようにして覗き込む。

古い箱から元気良く飛び出してきたのはハンドボール位の大きさの球形のロボット。耳のようなものをパタパタさせて、ピョーンピョーンと二人の周りを跳ねる。

キラが満面の笑顔になる。
「わぁー!!『ハロ』だっ!」

アスランがロボットを目で追いながら言った。
「小型球形ロボットか。昔のタイプみたいだけど。」

「へぇー、カワイイね!『トライエイジ』に出てくるヤツより小さいや。」
キラは『銀河戦隊トライエイジ』という戦隊モノのテレビ番組にはまっていた。

ハロはキラの手の上に着地する。
「オマエモナー。」
何だか言葉使いが変だ。

ハロは古い物で、少し色がくすんでいる。山吹色みたいな色をしていた。

「ねぇアスラン、コイツよく跳ねるよ!外に持っていって遊ぼう!」
キラは玄関の方へ走っていく。

「おいっ、キラ!」
あんな愉快な物を見つけたキラに宿題をやらせるのは無理だろう。
アスランはあきらめて、外に飛び出していったキラを追いかけた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ