ふたりの夏やすみ
□第1章 物置のハロ
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月面の都市国家・コペルニクス。今日の天気は、夏の快晴、ところにより夕立。
人工の海の水平線から、大きな入道雲がモクモク広がっている。
幼年学校の夏休みは、始まったばかりだ。
キラとアスランは一緒にリビングでおやつを食べていた。
キラは口の横にクリームをつけたまま、元気良く言う。
「ねぇ、何しようか?このあと、もう一回ゲームしない?アスラン。」
アスランはおてふきをキラに渡しながら、あきれて言った。
「さっき約束したよ。ゲームの後は宿題のロボット工作やるんだ。」
おてふきで口のまわりのクリームを拭きながら、キラは不満顔だ。
「夏休み、まだ始まったばっかりなのに。宿題なんてまだやらなくていいよ!」
「だめ。おば様が買い物に行く間、宿題して待ってるって約束したんだからな。オレ、工具箱を持ってくる。」
勝手知ったる親友の家、アスランは物置部屋に入っていく。
しぶしぶキラもついて行った。
アスランはぐるっと物置部屋を見回す。
「あれ、工具箱がいつもの場所にないぞ?」
「あっ、見つけた。あそこの奥の棚の上。」
見つけたキラが棚に足をかけて上っていく。
「気をつけて。なんだか奥の方は山積みになってる・・・」
アスランが言いかけたとき、キラは足を滑らせた。
あわててアスランがキラの背中を支えた。キラは目の前にあった古い箱に手をかけたが、箱もろともバランスを崩す。
受け止めきれなくて、ふたりで折り重なる様に倒れてしまった。
遅れて、古い箱や荷物もバラバラ落ちてくる。
「ごめん、大丈夫!?アスラン!」
「うん・・・キラは?」
アスランは痛そうな顔で自分の頭をなでる。
「ボクは平気。」
キラはちょっと心配そうにアスランの頭をなでた。
周りには落ちてきた荷物や箱が散らばっていた。
「あーあ、ちらかしちゃった・・・」
アスランが近くにひっくり返っていた古い箱を持ち上げる。すると、中からけたたましい電子音声が聞こえてきた。
「ハローハロー、ナイス トゥ ミーチュ!」
二人は顔を見合わせた。
「なんだろ!」
ワクワクしてキラは箱を開けた。
アスランも顔をくっつけるようにして覗き込む。
古い箱から元気良く飛び出してきたのはハンドボール位の大きさの球形のロボット。耳のようなものをパタパタさせて、ピョーンピョーンと二人の周りを跳ねる。
キラが満面の笑顔になる。
「わぁー!!『ハロ』だっ!」
アスランがロボットを目で追いながら言った。
「小型球形ロボットか。昔のタイプみたいだけど。」
「へぇー、カワイイね!『トライエイジ』に出てくるヤツより小さいや。」
キラは『銀河戦隊トライエイジ』という戦隊モノのテレビ番組にはまっていた。
ハロはキラの手の上に着地する。
「オマエモナー。」
何だか言葉使いが変だ。
ハロは古い物で、少し色がくすんでいる。山吹色みたいな色をしていた。
「ねぇアスラン、コイツよく跳ねるよ!外に持っていって遊ぼう!」
キラは玄関の方へ走っていく。
「おいっ、キラ!」
あんな愉快な物を見つけたキラに宿題をやらせるのは無理だろう。
アスランはあきらめて、外に飛び出していったキラを追いかけた。