オーブと君の笑顔

□第8章 カガリ
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プラントへ向かう軍用機の中で、アスランは昨日の事を考えていた。
彼は少し反省している。

(カガリは国家元首。国民に高く支持されている。国内は平和になり国政は上手くいっている)
誰もがうらやむ地位と名誉が、彼女にはある。

(だがカガリは学びたいと思っている。他の国の政治や軍の事を)
彼女は自分の名声など気にもかけず、これからのオーブの未来を思い悩んでいたのだ。

(『オーブにはもっと上にいける人材に力を与える術がない』か・・・)
カガリが言った言葉は、確かに今のオーブの問題点だ。

(お飾りの議員も議会もあるけれど、実際政治を取り仕切っているのは氏族だけだ)
これは世界的に見てもめずらしく、お世辞にも開かれた政治とは言えない。

(カガリの言うとおり氏族で無い限り、政治や軍のトップに立つことは無い)
一般人ではどれだけ能力が高くても、出世はいつか頭打ちになる。
氏族の養子や親族になりでもしない限り、政治家としての道は閉ざされる。

アスランやキサカが軍や政治の場で力を発揮できているのは、カガリが自分たちの意見を汲み上げてくれているからに過ぎない。

(カガリは氏族だが・・・血縁関係はない)
彼女は養子縁組でアスハ家に入った人間だ。

(ウズミ様は能力主義者だったのかもしれないな)
そうでなければウズミ亡き後、アスハ家の家督をカガリが継ぐことは無かっただろう。
家督はウズミの弟であるホムラが継ぐように遺言されてもおかしくなかった。
(カガリには施政者になる力があると、ウズミ様は判断したんだ)

そしてウズミは、まだ16歳の娘に国をまかせて逝った。
(・・・何か思うところがあったんだろうな)

ウズミの遺志、それはもう知ることはできない。
(カガリが自分で探してこれから作っていくオーブの未来が、ウズミ様の理想と重なっていくのかもしれない)

カガリを助け、共に歩んでいくのがアスランの願い。
(カガリの理想を、オーブの未来を、一緒に考えていこう)

アスランは窓から空を見上げて、カガリの笑顔を願った。
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