オーブと君の笑顔
□第7章 暁の姫
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ほの暗い明け方の空に、小さな光が一つ。
軍用機は高く高く上がって行く。
夜明け前の軍港で、カガリとキサカは二人一緒にその光を見上げ空を眺めていた。
日が昇る前に、アスランはプラントへと飛び立っていく。
カガリはポツリと文句を言うようにつぶやいた。
「専用機を使えばいいのに・・・」
キサカは腕を組んで空を見上げている。
「何度も言わせるな。今回の渡航は目立つとまずい。国家代表の専用機で乗り付けたら何事かと思われるだろう」
「専用機ならノーチェックで出入りできるじゃないか。パッと行って、パッと帰ってこられる」
「パッと帰ってこられる用事じゃないから、専用機を使う必要はない」
キサカの言葉にはっとして、カガリは視線を空からキサカに移す。
「お前どんな面倒事を頼んだんだよ。アスランだって忙しいんだぞ」
「聞かない約束だろ?カガリは俺との勝負に負けたんだ」
キサカはクルリと向きを変え、片手を振った。
振り返りもせず自分の仕事場へ戻っていく。
納得いかないカガリは腰に手をやり、キサカの背中をにらんでいた。
すると後ろから知り合いの声が聞こえてくる。
「こんな急いで帰らなくても・・・もっとゆっくりウィリアムにオーブを見せてあげたかったなぁ」
アーサーが残念そうにため息を漏らした。
「もともと強引に出張へついて来たんだもの、無理は言えないよ。自分の目でオーブを見られて良かったと思ってるよ」
ウィリアムの快活な声は朝の人気の無い空港によく通る。
そして二人と一緒にバルトフェルドも居た。
カガリは3人の方へ駆け寄る。
「やっと会えた!昨日はどこへ行っていたんだ、ひょっとして・・・もう帰るのか?」
驚いたのはバルトフェルドだった。
「代表!それはこっちの台詞だ、昨日はずいぶん君を探したんだよ」
「え?それはすまなかったな。私はずっと行政府に居たんだけれど。入れ違いになったのかな」
(意図的にすれ違うようにされてたんだろうな・・・キサカ君の仕業か)
バルトフェルドは渋い顔。
「代表とアスランに直接会って伝えたいことがあったんだ」
カガリは残念そうに空を指差した。
「残念、アスランはもう空の上だ。直接話したいのならプラントで会えるかもしれないぞ」
バルトフェルドの表情が凍りつく。