オーブと君の笑顔
□第4章 姉
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夕刻、行政府の前に車が一台停まった。
運転していたシンはエンジンを停めて、知り合いが来るのを待つ。
「まだ、来ていないわね」
助手席で文句を言ったのは、ルナマリア。
「仕方ないんじゃない?あの人偉くなっちゃったから・・・あ、来たかも」
ザフトの制服を身に着けた人物が正門から出てくるのを見て、シンはクラクションを短く鳴らした。
音を聞きつけて、車の方へ小走りにやってきたのはアーサーとウィリアム。
「やぁ、ごめんね。待たせちゃったかな?迎えに来てくれてありがとう」
車の窓を開けてシンは後部座席を指差した。
「大丈夫っすよ。お久しぶりです、後ろに乗ってください」
自動で開いた後部座席に、アーサーとウィリアムは乗り込んだ。
「いやー、いろんな人と挨拶してなんだか疲れちゃったよ」
肩をコキッと鳴らしたアーサーにウィリアムが突っ込む。
「そう?なんだか楽しそうに見えたけれど」
「え?僕そんなに顔、緩んでたかな・・・」
「もともとそういう顔なんじゃない?」
「ひどいなぁ」
「人に警戒心を抱かせない良い顔だって、ほめてるんだよ」
仲の良さそうな二人を微笑ましく思いながらルナは後部座席の方へ振り返った。
「あの〜、これから行くお店、料理がすごく美味しいんですけれどお酒も出る店なんです。ウィリアム君、大丈夫ですか?」
アーサーが朗らかに笑う。
「ウィリアムね、すっごくお酒強いんだよ。大丈夫大丈夫!」
シンが驚いて声を大きくする。
「あれっ?もう成人したんだっけ」
ウィリアムがアーサーをひと睨みして答えた。
「・・・オーブはプラントと違って、僕ぐらいの歳でお酒を飲むのは駄目ですよね。やめておきます」
アーサーが残念そうに言った。
「みんなで飲むの楽しみにしていたのに」
ウィリアムはぴしゃりと一言返す。
「すぐ酔いつぶれるくせに。僕が介抱するのは御免だからね。今日はアルコール禁止」
「えぇー!?」
ルナがシンにチラッと視線を投げる。
(なんだか・・・)
シンもルナに視線を合わせた。
(・・・グラディス艦長とアーサーさんの漫才を思い出すな)
シンとルナは笑いを堪えようとしたが、噴出してしまった。
前の二人を見て、ウィリアムが後部座席で不思議そうに首をかしげる。