オーブと君の笑顔
□第3章 母
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カガリとアスランは行政府に戻ってきた。
午後一番に面会予定になっているバルトフェルドはもう到着しているかもしれない。
カガリは足早に来客室へと移動する。
「アスラン、バルトフェルドのおっさんに会っていくだろ?」
早歩きしながらカガリと並んで移動するアスランは思案顔。
「そうだな、会いたいけど・・・」
「会いたいけど、なんだ?」
「遅刻した理由が『二人でお茶を飲んでたから』なんてばれたら、しかられそうだ」
アスランとカガリが一緒に現れれば、バルトフェルドはからかうだろう。
二人一緒に行政府をプチ脱走していた手前、生真面目なアスランとしては言い訳しにくい。
「あの人にそんな気後れする必要ないだろう?『行政府をちょっと脱走してました』って言っても笑いとばす人さ。想定外の行動をとる度合いで言ったら、おっさんの右に出る人はそういない」
カガリの物言いに、アスランは小さく笑いをこぼした。
「まぁ、そうかもしれないけれど」
来客室の前に着いた。
二人揃って扉を開ける。
するとそこに待っていたのは予想外の人だった。
「お久しぶりです代表!あ、アスランも一緒!?バルトフェルドさんは今ちょっと席をはずしてて・・・」
軽やかに立ち上がったのはアーサー・トラインだった。
「アーサーさん!お久しぶりです。あなたもオーブに来ているとは知りませんでした」
アスランが近づくと、アーサーは小さくささやいた。
「代表とふたりで登場なんて、相変わらず仲良しだね!」
アスランは苦笑いした。
(相変わらず一言多い・・・)
彼は昔から、こういうところがある。
「アーサーさんこそ、二人一緒に来るなんて仲が良いですね」
アーサーの傍らに少年が一人立っている。
その少年の視線はカガリに注がれていた。
彼の眼差しに気づいたカガリは、不思議そうに少年を見る。
見詰め合う二人の様子に気づいたアーサーが、朗らかに紹介した。
「代表はこの子に会うのは初めてですね。ウィリアムです、僕の息子です。と、いっても血はつながってないんですけれど」
カガリは首をかしげる。
「ウィリアム?たしか・・・」
アスランが言葉を引きついだ。
「タリア・グラディス艦長の息子さんだよ」