約束が終わるとき
□第2章 新しい友達
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八重桜が咲きほこる学園の正門前に、大きな車が停まる。
名家の子息子女が多く通うこの学園では、生徒が車で登校してくるのも珍しくない。
車の中で不機嫌な顔つきのアスランがつぶやく。
「なぁラクス。高等部に上がったことだし、車で迎えに来るのはもうやめてくれないか?」
アスランは頼んでいないのだが、ラクスが車で迎えに来るのが中等部時代からの日課になっていた。
ラクスはアスランの低気圧な雰囲気をものともせずに答える。
「私はかまいませんが、アスランはよろしいのですか?中等部の二の舞になるかもしれませんよ」
アスランの長い指がぴくっとうごめき、眉間に深いしわが刻まれる。
中等部の頃、一度車の送迎をやめたときのことを思い出した。
「私とアスランが別れたのだと噂になって、アスランの靴箱で女性からのお手紙の洪水が起きましたわね・・・懐かしいですわ」
思い出を語るラクスはどことなく楽しそうだ。
アスランはため息をひとつおとす。
ビジネスライクに結ばれたふたりの関係は、予想以上にアスランを縛っていた。
ラクスと契約したパーティから数年たっても、彼女の手のひらの上から抜け出せない自分。
またしてもいつものように彼女の思い通りに話が進む展開に、自分をふがいなく思いながらアスランは車から降りた。