さくら花舞う下で
□第2章 デュランダルの思惑
1ページ/3ページ
キラとアスランは複雑な表情をうかべ、一礼して局長室を出た。
廊下を歩きながら、沈んだ声でキラが言う。
「局長、本気で独身スタッフ全員をテレビ番組に参加させるつもりかな?」
アスランは不機嫌そうに視線をおとす。
「冗談を言っているようには見えなかったぞ。」
キラは唇を尖らせた。
「なんか話しが大きくなってきちゃったな。皆にボクのせいだって言われそう。」
アスランは足を止めてキラをにらんだ。
「お前のせいだろう!きっかけは。」
キラはアスランの形相にちょっとひるむ。
「うん・・・ごめんアスラン。テレビに出る事になっちゃって。」
謝るキラを見て、アスランの怒りが少し和らいだ。
「テレビに出るのは構わないけど、結婚する気も無いのにお見合いをさせられるなんて・・・」
キラは瞬きして言った。
「テレビに出ても大丈夫なの?アスランって、お父さんに黙って家を出てきちゃったんでしょ?」
アスランは目を見開いた。
「あっ・・・まずい。」
アスランの父は、息子を探しているはず。
テレビに顔をさらせば、連れ戻しに来るだろう。
家業を継ぐか自分の道をいくか、幼い頃から悩みぬいて出した結論。
アスランは親に逆らい、自分で選んだ職業に就こうとしている。
小さいころから進路に悩んでいたアスランをずっと見てきたキラは、考え込んでいる彼を見て申し訳なく思った
「ウチの父親も困ったものだけど、アスランのお父さんはもっと頑固だもんね・・・でも、自分んちの会社を継ぐ気は無いんでしょ?」
アスランの実家は大手の紡績メーカー。
息子が継いでくれる事を父・パトリックは望んでいる。
ザラ紡績は、業界の中では後発組ながらも注目されており、年々業績を伸ばしていた。
「継ぐ気はない、俺には無理だ。キラだって、お父さんとは違う道に進んだじゃないか。」
「まぁ、僕の場合は家が会社やってるわけじゃないからね。アスラン家ほど反対されなかったよ?」
「でもキラは生物化学の方面でも有望だって言われていたのに・・・よくお父さんがキラを手放したと思うよ。」
キラの父・ユーレンは生物化学分野の第一人者だった。
キラはニンマリ微笑んだ。
「母さんのおかげだよ。我が家は母親の方が偉いから。ウチ、女系が強いんだ。」