ミモザの咲く頃に

□第8章 ガンダムファイト
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カガリはインカムのスイッチを入れ、ジャスティスに通信する。
〈おいっ!大丈夫か?返事をしろ!〉

アスランはコックピット通信に入ってきたカガリの声に、自分を奮い立たせる。
「く、そっ!!」

グフの鞭に絡め取られたサーベルを一本捨てて、ジャスティスはグフの電撃から逃れた。
だが電撃ダメージでアスランの意識は朦朧としている。

その隙にグフが飛び出し、ビームソードで切りかかった。
「勝ち急いだなアスランッ!!」

ほぼ反射的にアスランは、盾に内臓されたワイヤーを射出する。

(目には目を、)
ジャスティスのワイヤーはグフの片腕に巻きついた。
(そっちが鞭なら、こっちはワイヤーだ・・・!)

「なっ!!?」
イザークがアスランの攻撃を把握する前に、ジャスティスのワイヤーがグフの片腕を固める。

それは頭で考えた対応ではなく、接近戦を得意とするアスランの鍛錬の賜物。
結果を予測するよりも早く体が動く。

「はぁっ!!」
グフの片腕をワイヤーでひきつけたまま、ジャスティスはグフの背後に回った。
腕を固められたグフのひざ裏に、ジャステイスのひざ蹴りが入る。

腕を空高くひねり上げられたグフが、ひざを崩し傾く。
ドオンッ、と重たい音が空気を震わせて、グフの巨体が地面にうっ伏して倒れこんだ。

機械同士とは思えない、モビルスーツの構造を熟知した故の、格闘技のような技。
会場は言葉を失った。

微笑みを浮かべるアスハ代表が大きく息を吸う。
《一本!それまで!!》
カガリの凜とした声が会場に突き抜けた。

会場は賞賛の歓声に包まれる。

アスランはホッと一息ついて、乗り上げていたグフの上から降りた。

(くっそぉっ・・・!)
イザークは歯軋りしながらグフを立て直す。
悔しさにのぼせたイザークだったが、なぜこんな一戦をする羽目になったのかを思い出した。

イザークはジャスティスのコックピットに通信を入れる。
〈約束だぞアスラン。申し込め。〉

唐突に命令されて、アスランは目を見開いた。
〈今すぐ!?バカ言うな。通信を聞いている人間がどれだけ居ると思う!〉

構わずイザークは話を進める。
〈カガリ・ユラ・アスハ、聞いているな?〉
試合中、グフにもカガリの声は届いていたのだ。

〈あ、あぁ!〉
ビックリしたカガリが、つっかえながらインカムで返事をした。

アスランはムッとする。
〈イザーク、代表をフルネームで呼び捨てにするな!〉

腹をくくらないアスランを、イザークは罵倒した。
〈うるさいっ!悔しければお前も、人前で彼女の名前を呼べるようになれ!〉

ここまで言ってしまっては、もう通信班も耳をそば立てて聞いているだろう。

(イザーク、本気だ。)
アスランは逃げ場の無い断崖絶壁に立たされた気分になった。

アスランは抑え気味の声で話始める。
〈俺は・・・これ以上は望んじゃいけないと思っていたんだ。・・・今が、幸せすぎて・・・〉





通信班ブースで話を聞いていたキラ達。
「アスラン・・・!?」
「どうしました、キラ?」

アスランの声に決意を感じ取ったキラは、ラクスの耳元に小さく囁いた。

ラクスは驚いた後、何やら思案顔になる。
「それは、逃す手はありませんね・・・」

キラは小首をかしげる。

「民意で長老方を押し切るのです。」
ラクスは聡明な微笑みをうかべてキラを見上げた。


(つづく)
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