ミモザの咲く頃に

□第6章 イザークの謀り
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夕刻、准将執務室。

憂い顔のザラ准将が仕事を消化していた。
(見合い・・・終わったかな。)

今日は休憩なしでずっと仕事をしていた。
いつものスピードで作業もこなしていた。
だが気持ちここにあらずで、一日何をしたか良く覚えていない。

何度も見合いに踏み込もうとしては、思い直して座った。
電話をしようと携帯端末を持っては、また置いた。

アスランはカガリの見合い相手をキサカから聞いて知っている。
(イザーク・・・なんで・・・)

『イザーク・ジュールとなら、見合いがまとまることもないだろう。』
キサカはそう言ったが、アスランの不安は消えない。

執務室の扉が開いて、人が入ってきた。
アスランは書類に目を落としたまま応じる。
「どうしました?」
秘書官だと思ったのだ。

「お前こそどうした。覇気の無い。」

アスランは大きく目を開けて、ガバッと顔をあげる。
デスクの前に、えらそうに斜に構えた友人が立っていた。
「イ ザーク。」

二の句が続かないアスランに、イザークは小さくため息をつく。
「見合いを止めにくるかと思っていた。お前がこんなに腑抜けているとはな。」

アスランは眉間にシワを寄せる。
(これだからイザークは・・・)
仲が悪いわけではないが、良くもなれない。

「見合いは終わった。お前この後、時間はとれるか?」

「あいにく忙しい。」
不機嫌そうにアスランは断る。
見合いの話は気になるが、今日はイザークといると喧嘩になりそうだ。

「・・・最近准将は、あまり残業しないと聞いていたんだがな。」

アスランがにらんで質問する。
「誰に聞いたんだ?」

「ルナマリア・ホーク。この間、偶然話をした。」

「人の噂話して、楽しいか?」
アスランは自分を止められなくなってきていた。
(駄目だ。けんか腰になってしまう。)

イザークもイラつきを顔に浮かべる。
「料理する暇があるなら、たまに訪ねてきた俺に少し時間をよこせ!」

「なっ・・・」
何でそんな事まで知っているのか。
聞こうとしたがイザークは部屋から出て行く。

「正面入り口のソファで待っている。早く来い。」
バタンと大きな音を立てて、有無を言わせずイザークは扉を閉めた。





急いで仕事を取りまとめて駆けつけるアスラン。
入り口でイザークが腕を組んで座っているのが見えた。

「待たせた。」
「いや・・・。飯でも食うか。」

アスランは巷で代表の見合いの話はしたくない。
「オレの家に来ないか?」

イザークは目を細めてアスランを見る。
「手料理でも食わせる気か?」

アスランの口元が歪んでヒクッとうごめく。
「そんな訳があるか!」

「冗談だ。いいだろう、お前の家に行こう。」
イザークは涼しい顔で先に進んだ。

(冗談がわかりにくいんだよ!)
アスランは心の中で吐きすてて、イザークの後ろを歩く。
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