ミモザの咲く頃に

□第4章 小さなミモザ
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アスハ邸の呼鈴が鳴る。

訪ねてきたのはエリカ・シモンズ。
出迎えたのはマーナと、なぜかアスラン。

「先に来てたいたのね。お待たせしたかしら。」
先日のカガリの体調の事で、今日は3人で話をする予定になっていた。

「いいえ。あの、せっかく足を運んでいただいたのに申し訳ありません。カガリが・・・」
困り顔のアスラン。

「今度は部屋から出てこない?」
エリカはやれやれという表情。

「はい・・・」
アスランはうなだれる。

「しょうのない子ね、呼びに行きましょう。」

エリカとアスランは二階のカガリの部屋へ向かった。

ノックを繰り返す。
「カガリ、出てらっしゃい。」
返事は無い。
「開けるわよ?」

エリカとアスランは部屋の中に入った。
だが部屋はもぬけの殻。

「どういうこと?」
エリカは部屋をグルッと見回す。

アスランは真っ直ぐテラスへと向かった。
「あー・・・やられましたね。」

エリカは不思議そうにアスランの方に近づく。
アスランの視線の先で、テラスの柵に縛り付けられたロープが垂れていた。

エリカは声を大きくする。
「あの子まさかここから降りたの!?」
「えぇ、たぶん。庭にはいると思いますけど。」

「どうしてわかったの?」
「俺がボディガードをやっていた時はしょっちゅうでした。」

アスランは懐かしそうにロープを見ている。
「抜け出したと見せかけてクローゼットの中に隠れてるっていうパターンもあるんですけど、」

彼はヒョイッと窓枠に足をかけて、死角に取り付けてある装置を調べる。
「セキュリティのスイッチが手動になってる。やっぱり脱走してますね。」

エリカはあきれてアスランを見上げた。
「あなた達、いつもそんな追いかけっこをしていたの?」

アスランはトンッと窓枠から降りる。
「まさか。ボディガード時代はセキュリティーのモードが変換されると、俺の端末に知らせるようにプログラムしてました。カガリが逃げたらすぐ駆けつけましたよ。」

眉をひそめるエリカ。
「セキュリティ、見直したほうがいいんじゃない?」

アスランが首を振る。
「外から内への進入に対する防犯は万全なんです。これは内から外への場合の問題ですから・・・窓の内側のセキュリティスイッチを手動モードにして、モードの切り替わる10秒の隙をつき、ロープを伝って外へ脱走する・・・カガリ以外にはしないでしょう。」

エリカは腕を組んで、ため息をついた。
「あなた、苦労してたのね・・・」

アスランは力なく微笑む。
「エリカさんとキサカさん程じゃないと思いますけれど。・・・あ、スミマセン、シモンズ主任。」

エリカは優しく言った。
「『エリカさん』でいいわよ。わたしも『アスラン』のままでいいかしら?」

「そのままでお願いします。『ザラ准将』ってからかうのはキサカさんだけで十分です。」

エリカが笑いながら移動する。
「カガリを探しに行きましょうか。」

「庭を一回りしてみましょう。」
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