ミモザの咲く頃に

□第3章 見合い話
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次の日、アスランはキサカに呼び出される。
「失礼します。」

キサカが敬礼する。
「呼び出して申し訳ありません准将。」

アスランはげんなりする。
「止めてくださいって言ってるじゃないですか。いつまで続くんです?キサカさんのその遊びは。」

キサカは笑った。
「いや、一応示しをつけないとな。お前の方が位が上になったんだし。」

「だからカガリが、キサカさんも准将になれって言ったじゃないですか。」

「お前は『ホームワーク』の手柄があったからな。俺は何も手柄をあげてない。准将なんぞ面倒くさくて・・・」
キサカの声はぶつぶつと小さくなっていく。

アスランとキラの情報収集用アプリは『ホームワーク(宿題)』と名付けられた。
カガリとアスランの許可が下りた場合のみ、オーブで使用可能となったアプリ。
何度かアプリが功績をあげ、アスランの昇進につながった。

「御用はなんですか?」
「あぁ、忘れていた。お前・・・この女性を知っているか?」

キサカはアスランに見合い写真を見せる。

アスランの知っている女性だった。
「確か、東アジア共和国の外務大臣の・・・お孫さん?」

「やっぱり面識があったのか。お前、この女性をどう思う?」
「・・・香水がお好きな方だったと記憶していますが。『テロリストを捕まえてくれたお陰でお爺様が助かりました』って、お礼を言われた事があります。」

「あぁ、カガリが公道でランチャーを撃った時のか!」
「キサカさんがあんな物騒なものをカガリに渡すから・・・オレも代表を止め切れませんでしたけど。その女性がどうかしましたか?」

「お前と見合いをしたいそうだ。」
「は?」

「大概の見合いは断っているんだか、この女性は断れない。有力者だからな。」
「断れないって!?でも・・・!」

「見合いして、失礼の無いように振られてこい。・・・同時か、まいったな。カガリのもあるのに。」
「そんな無茶な!・・・カガリが、どうしたんです?」

「カガリにも、断りにくい見合いが3つ入ってる。」

アスランがひどく困惑した顔になる。

アスランの表情を見てキサカが進言する。
「准将になったんだ、そろそろお前たちもちゃんとしたらどうだ?ボンヤリしてるとこんな風に、横からカガリを掻っさらわれるぞ?」

「そうしたいのはやまやまですが・・・生憎今、ケンカ中です。」

キサカは、機嫌の悪そうなアスランの顔をみる。
彼の頬にアザがあるのを見て笑い出した。
「そうしていると、お前も年相応に見えるもんだな。何が原因でケンカしたんだ?」

「男にはわからないコトだそうですよ。女の悩みだそうで。」
「まぁ女って奴も大変だよな。毎月イライラするらしいし。」

ちょうど話に上がったので、アスランは聞いてみる事にした。
「・・・女性特有の痛みって、そんなに酷いものなんですかね?」

キサカはさらりと言い放つ。
「カガリはそういうのは全く無いぞ?」

アスランは予想外の返事にちょっとビックリした。
「・・・詳しいですね。」

何でもない事のようにキサカは爆弾発言を落とす。
「昔そういう世話もしたからな。アイツ初めての時、野外演習中だったんだ。それで傍に女性がいなくてな。」

(うわぁ・・・)
アスランは苦虫を噛み潰す。
「それ・・・聞きたくありませんでした。」

今更ながら、カガリとキサカの絆の深さを思い知る。
(・・・なんで男だらけの野外演習に、お姫様が一人で混ざってたんだか。)
アスランが心の中で独り言をつぶやいていると、ノックも無く扉が開いた。

「おいキサカ、どういう事だ。」
カガリがキサカの執務室に入ってきた。

「代表じきじきお出ましとは、どうした?」
「どうもこうもない。見合い3件、全部断ってくれ。」

キサカは引かない。
「今回のはお相手が良すぎて断りにくい。1件見合いしてくれれば、それを理由に他の2件は断れるんだかな。」

「2件も3件も同じだろう。」カガリも引かない。

3件同時は凄いな、と思いながらアスランは退散しようとする。

「1件くらい見合いしてくれカガリ。アスラン、お前もだ。逃げるなよ。」

キサカに背中を向けて執務室から出ようとしていたアスラン。
しかられた子供のような顔で立ち止まった。

カガリは不思議そうにふたりを交互に見る。

キサカはカガリをチラッと見てからからかった。
「じゃじゃ馬の相手ばかりじゃ疲れるさ。たまには深窓の令嬢と食事も悪くないだろアスラン。」

(今、カガリをからかうのはマズイです、キサカさん。)
アスランはキサカに懇願するように視線を送る。
「・・・疲れませんよ。」

よく分からないが、自分の事だと感じたカガリ。
「じゃじゃ馬は否定しないのかよ。」

アスランはあせって否定した。
「誰もカガリだとは言ってない。」

キサカは楽しそうにふたりを見比べる。
「カガリ、仕事なんだ。アスランにも断れない見合いがきてる。」

(見合い!?そんなの、前は絶対に受けなかったじゃないか!なんで今になって・・・)
カガリはアスランをにらむ。

どう返したものかわからないアスラン。
カガリに少しでも機嫌を直してほしくて、とりあえず眉根を下げて小さく作り笑いした。

(ニヤニヤして・・・准将になったら益々モテてご満悦か!?)
カガリの目がすわる。
「仕方が無いな。私も仕事だ、見合いする。」

「えぇっ!?」
アスランが落胆の声を上げる。

「なんだよ。自分は見合いするのに、私にはするなっていうのか?」

「だから、仕事だって・・・!」
「私だって仕事だ。お前に口出しされる言われは無い!」

ムカッとして、アスランも苛立ちが顔に出る。
それを見たカガリは受けてたった。

「断れないほど良縁の見合いだ。私も真剣にお相手しないとな。」
カガリは肩を怒らせて扉の方に歩いていく。

「うーんとドレスアップしていこう。良い方ならお付き合いしてみるのも悪くないかもな!」
大きな音とともに扉をたたきつけて、カガリは執務室から出て行った。

キサカがポツリとつぶやく。
「・・・まずかったか?」

アスランはがっくりと椅子に腰を落として、頭を抱え込んだ。
「・・・まずいですよ・・・!」


(つづく)
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