ミモザの咲く頃に

□第2章 コーディネイターの苦悩
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カガリを想う気持ちは、言葉だけではたりなくて、俺は彼女を求める。
その先にあるものなんて、コーディネイターには無縁だと思い込んでいた。


求められる幸せに溺れて、私はアスランに応える。
自分の全てで彼を受け止めて、ありったけの私の想いを贈る。
その行為の別の意味など、深く考えていなかったかもしれない。




ピポピポピンポーン

深夜、アスランのマンションに呼鈴が響いた。

(カガリ?)
もう寝ようとしていたアスランは目を丸くする。
彼はベットから起きだした。

彼女が連絡も無く訪ねてくるのはいつもの事。
だが今日は訪ねて来た時間が遅すぎる。

扉を開けると思いつめた様子のカガリが立っていた。
彼女は無言でアスランの脇をすりぬけて家に入る。

リビングに入るなり、カガリはストンと床に正座した。
「座ってくれ・・・」

ただならぬカガリの雰囲気。
「いやもう、座っているけど。」
既にアスランも差し向かいに正座していた。

カガリが言いよどむ。
「その・・・こないんだ。」

首を傾げるアスラン。
「こない?何が?」

何ともいえない困惑した表情でカガリはつぶやいた。
「あたし、あたし子供ができたかもしれない・・・」

アスランの思考が鈍く重くなる。
(何を・・・言ってるんだ。)

コーディネイターは生殖能力が低い。
カガリが不安にならないように避妊もしている。
さらには遺伝子結合度を操作されている疑いのある自分。

不妊治療無しで子を授かるなど、アスランは考えた事も無かった。

だがそれを差し引いたとしても、この後彼が発した言葉は一生の不覚。

(そんなことって・・・本当に・・・)
「俺の子か?」

リビングに一瞬の静寂。

スッと、カガリの琥珀から光が消えた。
(今、コイツ、何を言った。)

カガリは自分の血の気が引いていくのを感じる。
(私が他の男に身を委ねたと、言いたいのか?)
代わりに腹の底からこみ上げてきたのは、怒り。

烈火のごとく立ち上がる彼女。
「・・・ふざけるなっ!!!」
カガリの拳がとんだ。

呆けていたアスランに、見事な右ストレートが入る。
派手な音をたて彼は後ろに倒れた。

振り下ろした拳を震わせて、カガリが吐きすてる。
「私は・・・私はオマエを裏切ったりしない!!」

ぽろぽろと大粒の涙が落ちる。
「・・・帰るっ!」

大きな足音をたてて去るカガリ。

アスランの思考が戻ってくる。
(・・・帰るって、おい、これからの事を話さなきゃ・・・!)

ドサッ
玄関の方から大きなモノが倒れたような音が聞こえた。

床に横たえていたアスランはゆっくり上体を起こす。
(何だ今の音・・・)

未だ呆けている彼はゆっくりと廊下に向かう。

玄関の光景を見た彼は、心臓が止まるかと思った。
「カガリッ!!」
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