生まれてきた理由
□第8章 たとえ世界が
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モニター越しに、キラはアスランを厳しい目で見つめる。
「破壊するって・・・ひとりで?」
『あぁ、そうだ。』
アスランには頑なに己を譲ろうとしない態度が見て取れた。
キラは小さく息を吐く。
(こういう風になると、アスランはどうやったって聞き入れてくれないんだよね・・・)
「わかった、場所を教えるよ。でもねアスラン、ひとりで行く事は賛成できない。犯人がそこにいるかもしれないんだ。」
アスランは断固として一人で行くつもりだった。
不愉快な動画に関わる人間を、これ以上増やす気はない。
『十分な装備でいく。オレ一人のほうが動きやすい。』
キラは目を細めて、しばらく考える。
「・・・わかった。」
ラクスは驚いた。
キラがアスランを一人で行かせるとは思っていなかったのだ。
「キラ、それは危険です!」
キラはラクスに微笑む。
ラクスはそれを見て、反対するのを止めた。
(何か考えがあるのですね?)
キラはスラスラしゃべり始める。
「僕が見つけたアプリ最後の足跡は、オノゴロ島西部にある、軍港の旧外部制御室。」
『あそこは・・・二度目の大戦で攻撃された後、廃墟になって今は使われていないはずだ。』
「隠れるには、もってこいでしょ?そこの汎用コンピューターはまだ生きてるみたいだよ。」
アスランは立ち上がった。
キラは最後に注意する。
「アスラン、アプリは寄生型でオンライン上を移動する。汎用コンピューターをネットワークから孤立させてやれば安心だよ。オフラインに閉じ込めれば、プログラムは逃げられない、はず・・・」
その時キラはひとつの可能性に捕らわれる。
ラクスは不思議そうにキラを見つめた。
『わかった、行ってくる。』
アスランはキラの方も見ずに通信を閉じた。
キラは考え込んでいる。
(このアプリ、ひょっとして・・・)
「キラ?アスランを一人で行かせて良いのですか?」
ラクスに見つめられている事に気付いて、キラは我に返る。
「いや、誰かに一緒に居て貰った方がいい。ああいう風になったアスランは思いつめちゃうから。」
キラは頭の後ろに手を組んで、背もたれに寄りかかって考えた。
「キサカさんにお願いしようかと思ったけれど、カガリに頼もう。」
「カガリさんに?犯人と鉢合わせする可能性があるのにですか?」
キラの顔つきは明るい。
「カガリはアスランの力になるよ。それに人間がそこにいない可能性はかなり高いんだ。」
「さっき言っていた、犯人はアプリ自身だというキラの予測ですか?」
「うん。発信元の場所があまりにも、あっちこっちに飛んでるからね。この移動速度は人間には無理だよ。」
ラクスはキラの態度が微妙に変化した事が不思議だった。
だが、今は早く行動に移すべきだと考える。
「では、カガリさんに連絡しましょう。」