ミモザの咲く頃に
□第7章 合同軍事演習
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あきれたアスランがポツリと言う。
「ディアッカに同情するよ。」
イザークがプイッと横を向いた。
「その必要は無い。今回の一件は元はといえばアイツのせいだ。」
「え?」
「見合いをジュール家に提案してきたのは、ディアッカだ。」
驚くアスランをキラがジッと見る。
「ねぇ、僕それも気になってるんだけど。お見合いはどうなったの?カガリに聞いても、なんか歯切れが悪いんだよね。」
アスランがダンマリを決め込む。
(見合いの話、キラの耳にも入ったか。まぁ隠せないとは思っていたけど。)
イザークが軽く説明した。
「今日の模擬戦次第だ。勝敗で見合いの結果が出る。」
キラが不思議そうに聞く。
「どういうこと?」
イザークがアスランに目をやって挑発した。
「そこの腑抜けに条件を出したんだ。勝ったら白黒はっきりつけろとな。」
「アスランが勝ったらって・・・イザークって負ける気あるの?負けず嫌いの君が勝負を捨てられる?」
(そうだ。俺もそれが不安だ。)
イザークはおそらく、アスランの為に人肌脱ごうとしてくれている様にみえる。
だが、プライドの高いイザークがわざと負けるなんて事があるだろうか。
威厳たっぷりにイザークが宣言した。
「もちろん勝負は全力でやる。アスランが自力で勝利を勝ち取れば良かろう。」
アスランはガックリうなだれた。
「そんな事だろうと思ったよ。」
ふたりの話を聞いていたキラがまとめる。
「えぇっと・・・つまりアスランが勝てば、カガリに何らかのアプローチをするの?」
「そうだ。」
断言するイザークと、困った様に視線をそらすアスラン。
(イザークが勝ったら、どうなるのでしょう。)
ラクスが不思議そうな表情をうかべた。
「カガリさんはそれをご存知なのですか?」
イザークが答える。
「漠然とは。」
アスランが力なく言った。
「本当か?今ケンカ中だから・・・カガリ、オレとはまともに話さないんだぞ。」
「えぇっ!アスラン達がそんなケンカって、珍しいんじゃない?」
キラが心配そうに聞く。
ラクスはイザークをチラッと見て聞く。
「カガリさんは今日、こちらにいらっしゃるのですか?」
アスランがそれに答えた。
「いつも公開演習の最後に代表からねぎらいの言葉がある・・・今日は代表に大きな予定も入ってないし、カガリ来るんじゃないかな。」
「そうですか・・・そろそろお時間ですわね。アスランは何に乗る予定ですの?イザークの搭乗機は最新型、グフ・イグナイテッド・アメイジングです。」
「最新機種!?」
アスランが驚いて大きな声を出す。
「本気でやると、さっきから言っているだろう!」
イザークも声が大きくなる。
キラがアスランの肩をつついた。
「一般向けの展示用にインフィニット・ジャスティス持ってきてるよ?乗るんなら許可とってきてあげる。どうする?」
今度はイザークが驚く。
「何だとキラ!貴様どっちの味方だ!!」
ラクスがニッコリイザークに笑いかけた。
「イザーク、優れた乗り手は機体を選びませんわ。」
文句たらたらイザークがまくしたてる。
「アスランは選んでいるじゃありませんか!」
「じゃあ頼む、キラ。」
「了解。」
キラが手を上げたので、アスランもパシンと低めのハイタッチをした。
「きさまら卑怯だぞ。オーブの機体で勝負せんか!」
「手段は選んでられないんでな。」
翡翠が力強い光を放つ。
「・・・やっと本気になったか。」
一度本気のアスランとやってみたかったイザークは満足そうに微笑んだ。
しかし、イザークの勝負に対する判断は冷静。
「ただし、ファトゥム01は外せ。あの機動力は反則だ。」
アスランはもう体裁は気にしていられない。
「何!?お前こそ飛び道具はよせよ。一般人にでも当たったら大惨事だ。」
イザークは自軍の方に移動し始める。
「言われなくても火器はなしだ!貴様こそ撃つなよ!?」
アスランもイザークに背を向けてオーブ軍の方に戻った。
「上等だ!武器は接近戦用のみ!グフが新品だろうと遠慮せず切り込むぞ、覚悟しろ!」
ふたりはいかり肩でポンポン文句を言い合いながら各々自分の軍のブースに戻って行った。
キラとラクスが複雑な表情で二人を見送る。
「あのふたり、仲がよろしいのでしょうか?」
「・・・何とも言えないね。」