僕と彼女と紫水晶

□第8章 ガールフレンド
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カリダが二人を出迎えてくれる。
「お帰りなさい。暑かったでしょう、何か飲む?」
「うんっ、冷たいもの!ジュースある?」

「アスランは?ジュースでいい?」
「いえ、僕はすぐ帰りますから。」

カリダはふと気付く。二人はそっぽを向くようにお互い目を合わせないのだ。
「・・・ケンカでもしたの?」

キラがあせってアスランの肩に腕を回す。
「そんなこと無いよ、ねぇアスラン!」

アスランは目を細くしてキラを一瞥した。

カリダは二人に何かあったのだろうと察する。
(ひょっとして・・・)
カリダには気になっている事があった。
「キラが何かアスランにイタズラでもした?」

驚いてキラはカリダを見る。
「どうして・・・?」

「最近、貴方の様子がおかしいから心配していたのよ。」
はぁっ、とため息をつくカリダ。
「朝早くから大きな荷物を持っていなくなるし、夜中に洗濯してるし・・・」

キラはびっくりする。
「母さん、気付いていたの?」

「当たり前でしょ?隠しきれると思う?」

カリダはキラがこそこそ何かをしていることに気がついていた。
「貴方がこっそりワンピースを洗濯しているのを見たときの・・・母さんの気持ちがわかる?」

カリダは心の中で小さく叫ぶ。
(変な方向に目覚めてしまったんじゃないかと心配だったのよ!)

アスランはカリダの表情を見て思った。
(お気の毒に。おば様やっぱり気付いていたんだ。)

「何かのイタズラだろうとは思ったけど・・・アスランに迷惑かけていたの?ゴメンね。」

「いいえ。気にしないで、おば様。でもキラには罰が必要ですよ。」
「そうね、ちょっと反省してもらわないと。」

「夏休みの宿題はどうです?終わるまで外出禁止とか。」
「いいわね!この子ったら、いつもギリギリになるまで宿題に手をつけないんだから。」

実の親子のようにポンポン会話をつなげていく二人にキラは唖然とした。
(ちょっとちょっと、なんでそんなに二人とも息ピッタリなの?)

「宿題終わるまで、僕が見張ります。」
微笑んだアスランの顔は、なんだか悪役みたい。

「お願いするわアスラン。ありがとう、ご飯は毎日ウチで食べてね?」
カリダはニッコリ笑った。
「アスランがいてくれて、ホント助かっちゃうわ!」

ふたりは兄弟みたいだ、とカリダは思う。

キラには、双子の姉がいるが、本人はそれを知らない。
秘密にしている事を申し訳なく思うこともある。

だから、本当にアスランがいてくれてよかった。
キラは一人っ子で育ったら、とんでもなく無鉄砲で、イタズラ者になっていたかもしれない。

時々変に行動力を見せる息子。
イタズラも、イタズラではすまされない度を越したモノがある。
キラの能力がとても秀でている事は、このところ顕著にあらわれてきていた。

『優秀でありすぎることで、いつかこの子に災難が降りかからなければいいけど・・・。』
そんな事をヴィア姉さんは言っていた。

人に注目される日がきても、そばにアスランがいてくれれば、きっとキラは救われるんじゃないかしら。


カリダが望んだとおり、大きくなったキラとアスランは、手を取り合って支えあい、世界を救う。
キラがスーパーコーディネイターである自分自身を受け止める事ができたのは、一緒にいてくれた仲間たちによる所が大きい。

これから3年後に、ふたりは離れ離れになるが、強い絆でその友情は続いていく。
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