ふたりの碧い想い

□第3章 氏族の祠
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穴の底には怪我をしたユウナが横たえていた。

アスランはユウナのそばに屈み覗き込む。

「う、ん・・・?」
ユウナはゆっくりと目を開けた。
頬から血が出ていたが、出血の割には傷は深くないようだ。

ユウナに意識があったことに安堵して、アスランは話しかける。
「大丈夫ですか?どうしてこんな事に?」

ユウナは次第に意識を取り戻したようだった。目の奥に力が戻ってくる。
「アレックス・・・お前も落ちたのか?」

ここでアスランに疑問がおこる。
「えぇ。・・・あの、さっき私が落ちたとき、足を引っぱったのはあなたですよね?」

「ん?・・・そうか。暗闇に長いこといたら突然、上の穴がまた開いたはいいが、ライトがまぶしすぎて・・・閉まる前に上にあがろうとして咄嗟につかめるものをつかんだが、お前の足だったのか。」

「閉まる前にって、」
言いかけたアスランをユウナが制止する。
「お前が私の上に落ちてきたから、頭を打ったぞ。また気絶するところだったじゃないか。だいたい・・・」

頭の上からくぐもった音がする。
二人が見ると、穴の上部、四角い穴の入り口が閉まっていくところだった。

「あぁー!!また閉まっちゃうよ!」
ユウナが叫ぶ。

「またって、さっきも閉まったんですか!?」
話しながらアスランはジャンプして、観音扉のように閉じていく天井にピッケルを引っ掛けた。

アスランがぶら下がっても閉まる扉は止まらず、もう少しで閉じてしまいそうだ。

「くっ!」
アスランは叫んで、自らピッケルを天井扉からはずし、穴の底に着地する。

天井は完全に閉じてしまった。

ユウナは食ってかかった。
「何やってんだよ!自分から落ちるなんて。それ、扉に挟んでおけば、開けられたかもしれないのに!」

アスランは断固とした口調で言い切る。
「いえ、扉はすごい力でした。人間の力で扉を開けるのは無理です。この後のことを考えると、ピッケルを挟まれて失う方が危険です。」

感情を高ぶらせたユウナの目と、頑固に自分を譲らないアスランの目、一瞬即発でにらみ合った。

その時、不吉なゴウンという音がした。
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